彼女の生い立ちは、複雑だ。幼いころに両親が亡くなったので、両親のことは、彼女本人もはっきりしたことを覚えていない。南部森林で狩猟を行っていたミコッテ族の一家だったようだ、両親が亡くなった後、一族の親戚に姉弟であずけられた。姉弟支え合って生活していた。狩りの手伝いをする中で、短弓の扱いを覚えた。この頃、グリダニアの密猟への取り締まりが厳しくなり、一族の生活が苦しくなっていた。困った親族は、姉弟を東ザナラーンの人買いに売ってしまった。東ザナラーンで姉弟は引き離され、彼女は、ウルダハからロミンサに運ばれているところをイエロージャケットに摘発され、救助された。弟を探したかったが、南部森林の親戚の元に帰ることもできず、一時施設に預けられ、その後、子供のいないエールポートの商人に引き取られた。彼女は、ラノシアの市民となり、自分の自立と弟を探す機会を得るためにイエロージャケットに入隊した。
弟は、姉から引き離された後、東ザナラーンからウルダハの豪商の元、奴隷のような扱いで、下働きとなった。東ザナラーンで自分より幼い、ミコッテの少年と一緒になった。人買いは、幼い少年の面倒を弟に押し付けた。ちょうどよかったのかセットとして扱われ、豪商の下働きに売られた時も、少年と一緒だった。
弟は、頭の回転が速く、要領が良かった。このため、下働きの中でも頭角を現した。弟が頑張っていたのは、少年との生活を守るためもあった。また、地位が上がれば、逃げ出すチャンスが来るかもしれないと思ったからだ。そのまま、表の稼業で出世できると思ったが、それは、甘い考えだった。ある時、下働き仲間の一人が逃げ出した。逃げ出した仲間はすぐに捕まった。そこに、弟を含め歳が同じくらいの5人が集められた。逃げた仲間は、床に転がっていた。はじめ麻袋だと思ったが人だった。息もかすかな状態でピクリとも動かなかったが、確かに生きていた。5人の前に1本のナイフがおかれた。大人の一人が殺せと言った。5人は、顔御見合わせて、お互いできないと。後ずさった。大人は、「誰がやるんだ、早くしろ。出世のチャンスだぞ。」と。誰かがやらなければいけない。弟は、獲物の解体の経験があった。また、傷ついたまま生きる方が苦しいことも獲物を見て理解していた。弟は、ナイフを手にした。そして、そのまま、誰の顔も見ずに、なるべく苦しまないように、とどめを刺した。一線を越えてしまった。次の日から仕事が変わっていた、裏の仕事だ。少しはお金が使えるようになった。人殺しとなってしまったので逃げることも諦めた。ただ、少年との生活を守ることに徹した。弟の裏での評価もあがり、出世していった。しかし、少年には、裏の仕事はさせず、自分が何をしているかも教えなかった。弟には捨てられない願いがあった。「もう一度、姉さんに会いたい」だ。神様という物を知っていれば、たぶんそういう物に対する願いだったのだろう。しかし、弟は、生まれてからそのような対象は知らない。ただ、その願いがかなえば、すべてを終わりにしてもよいと思っていた。