光士は、就職してから半年がたち、生活にも慣れてきた。昨日は、金曜日でもあり、夜には、仮想テーマパークの友達とオンライン飲み会があった。ちょっと飲みすぎで、朝、けだるく起き上がることができなった。
そうだ、今日は、久しぶりに実家に帰る予定だった。珍しく母から、この期間指定で帰って来いと連絡があった。重たい体を無理やり起こし、帰る準備を始めた。
アパートを出ようとしたとき、新人研修報告書の提出を忘れていたのに気が付いた。そうだ、昨日出さなきゃならなかったんだ。と思い出し、ノートPCをリュックに突っ込み、家を出た。
アパートと実家は、そんなに離れていない。1時間程度だ。毎日の通勤を考えると少し遠かった。何より、両親から離れて一人暮らしがしたいという願望もあった。
母親には「チームワーク」という謎に熱い一体感を求めるところがあり、正直うざかった。幼い時は、それが心地よく楽しかったが、反抗期に入ると暑苦しく感じるようになった。
自分が感じているだけなのかもしれないが、一人っ子であり、成長するにつれて向けられる期待が重たかった。父も母より年下なのか、母の尻に敷かれる感じで、同じ男性として頼りないと感じていて、見ていてイライラした。自分は、そういうのは嫌なので、結婚するなら同い年か年下の人が良いと思っていた。