学者

次の日、コンタクトリストから昨日の侍の名前を確認した。彼の顔を思いだそうとすると、昨日の侍の顔が浮かぶ。それを現実の名前を当て、打ち消そうとした。
彼の顔がちゃんと思い出せないまま、無理やり日常に戻すためにルーレットを回し始めた。ルーレットを早く回すために私は、いつもタンクで申請していた。ノーマルコンテンツならタンクでもやれるくらいのスキルはあった。リストの上から順番に消化していく。50、60、70、80IDルーレットに入る。私の他は、学者、詩人、赤魔道士だった。侍はいない。あまり見覚えがないIDだった。ボスのギミックがわからない。HPが減って倒れそうになった。今日はどうしたんだろう。うまく対処ができない。学者の支えが無かったら、倒れていた。ふと、学者を見る。彼の顔だ。ちがう、昨日の侍だった。名前も確認した。間違いない。
戦闘後、「支援ありがとうございます。」とあいさつした。「気にしないで、慣れれば大したことないですよ。」と言われた。なんか、気に食わない。普段だったら何ら問題ない難易度だ。こんなことになったのもお前のせいだろうと思った。
「ヒーラーもやるんですね、」と返してしまった。
彼は「えっと、会ったことありましたっけ。すみません。覚えていなくて。」と言った。
「昨日、ノーマルレイドで、侍やっていましたよね。」
「すごいな、よく覚えていますね。全員の名前覚えているんですか。」
私は、返事に困った。「たまたまです。」
「なんかうれしいな、注目されることないので。うまく成ったってことかな。フレンド申請いいですか。友達少ないんですよ。」
フレンド申請が来た。断るのも面倒なので、承認した。たぶん、もう2度と会うことはない。
この日も疲れを感じたので、そのままログオフした。

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