今日は、山田君が計画したアジサイ寺院デート。地味すぎるだろうと思ったら、結構若い人いるんだね。映えるというのかな。季節なんだけど、ちゃんと雨が降ってきた。すごいね、山田君。しかも小さい折り畳み傘用意して。わざとでしょ。ちゃんとわかってる。だって、この日の天気は晴れって、予定に書きこんであった。山田君の持つ一つの傘に二人で入る。
別にカコちゃんでも、山田君でもいいんだけど、これだけは言っておきたかった。
「無理しないでね。続かないから。あと、遠慮はだめだよ。二人の間では。私の場合、遠慮は言い訳だったよ。やりたい様にやってください。不満が出たらその場で言うからね、私も。」
「無理なんかしてないし、不満なんかないよ。」といって、傘を私の方に傾ける。
「今はね。でも絶対変わるから。私たちも、周りも。そん時のことだよ。」と、傘を押し返して、ぎゅっと山田君に体を寄せた。計画通りだ、私が傘を忘れたのは。
静かで、優しい雨が、二人の肩を濡らしていた。いいんだよ、二人で濡れれば。私だけとか彼だけとかじゃなくて、二人で。そうやって歩いていきたいな、彼と。
「濡れちゃったね。ごめんね、変な計画立てて。」と山田君が謝ってきた。
「いいんだよ、私の計画通りだよ。」と私が返す。
山田君は、私を見て、「おかしな二人だね。」とほほ笑む。
「おかしいけど、楽しいね。」と私も彼に微笑み返した。
おしまい