今日を大事に

僕は、彼女を思った。プリムさんの顔しか浮かんでこない。心の中には、あったかくて切ない思い出が確かにあるのに。
私は、彼を思った。マスターの彼のことしか浮かんでこない。心の中には、熱くてほろ苦い思い出が確かにあるのに。
私は、彼にお願いした。ダイヤモンドリングを作ってと。私が作ったリングは彼にあげた。彼が作ったものを私がもらった。私たちは、公式のエターナルセレモニーをするつもりはない。だって、もう正式な儀式は終わっているし、大切なアイテムもたくさんあるから。いまからやっても公式なだけで本物じゃない。彼のもとにテレポできないのは不便だけど、その時は呼び出せばいい。いつだってすぐに来てくれてたんだから。
私の明日が来なくなる日がいつかなんて分からないけど、いつかは来るんだよね。誰にでも。私がインできなくなる日が来るかもしれないけど、今日を大事にしていれば後悔なんてしないよね。今日を楽しんでいれば、その時、彼だって悲しまないよね。なんか、わかった気がした。わかった気だけだけど。今日も彼とこの世界を楽しもう。そうだ、彼に会いに行こう。

おしまい

茶番劇

FCハウスの庭に、たくさんのFCメンバが待っていた。みんな、私たちを祝福してくれる。
彼は、そこにいるサブマスに「本当に先代の遺言なのか?サブマスの引継ぎの儀は?」
サブマスは、笑いながら「そんなわけないだろう。みんなが二人を心配して茶番劇を仕掛けたんだよ。まあ、先代マスターの意思だよ。みんなちゃんと引き継いでいるんだよ。」と言った。
「はあ、マジかぁ?」
彼は、茶番劇に乗せられて凹んでるみたいだったけど、私は、茶番でも満足だった。
「でもこの衣装はないだろう。これエタバンの参加者の衣装だろ。」
それに対してミドラン女子さんが、言う。
「仕方ないじゃないですか。エタバンドレスなんて手に入んないんだから。お二人ともよくお似合いですよ。」
私は、この衣装で満足だった。二人で素材を集めて二人で作った衣装なんだから。
Aさんが「プリムさん、ブーケ、俺に下さい。」と要求する。
すかさず、ミドラン女子さんが「私がもらおうと思ってる!!」
楽しい。この楽しい空間を守っていこう。精一杯。

就任式

私とマスターは、供物の衣装に着替えて、FCハウスにいる。ダイヤモンドリングとブーケだけがチェストになかった。FCハウスには、誰もいない。そこに、サブマスが入ってきて、
「プリムさん、特にないんだよね、引継ぎとか。プリムさんの階級をサブマスにしておいたから、とりあえず、手続きは終わりかな。後はよろしくお願いします。」
と、言ってきた。
「就任式は?」
「特にないですよ。これで終わりです。」とサブマスは出て行った。
二人してポカーンとしていると。
ミドラン女子さんとAさんが入ってきた。
Aさんは、私にグリダニアンブーケを渡して、「マスターのことしっかり支えてください。」と言った。
ミドラン女子さんは、マスターにダイヤモンドリングを渡して「離しちゃだめですよ。頑張ってください。」と言って、二人とも出て行った。
私の気持ちは決まっていた。マスターの方をみた。彼は、私にひざまずいて、ダイヤモンドリングを渡してきた。
「よろしくお願いします。」
「はい、よろしくお願いします。」と私は、ダイヤモンドリングを受けとった。私が作ったリングだ。こんなことだったら彼に作ってもらえばよかった。
二人の会話が止まった。
「外に出ようか。」「そうだね」と庭に出た。

アルジク

黒衣森南部森林
ここが最後の巡礼地だ。サブマスが待っていた。
「お疲れさまでした。サブマス就任式を週末にやりましょう。場所はFCハウスです。供物の服装を着て、出席お願いします。」
とだけ言うとサブマスは、帰っていった。残された僕たちは、最後の石碑に祈りをささげた。
「とうとう最後だね」と私が言うと。マスターは、「長かったね、いや短かったかな」と変なことをいう。確かに長かったようで、短かった。私は、もっと二人で旅を続けたい気分だった。
「まだ冒険は、続きます。ここが最後じゃないですよね。」と私は確認を求めた。
「当然だよ。FCも盛り上げていかないといけないからね。」とマスターが返した。
FCか。覚悟は決めたからFCはちゃんと支える。でもFCだけなの、二人の関係は。もやもやしていると。
「二人の旅も悪くないから、たまには一緒に旅に出ようよ」と提案された。
「もちろん。行くよ」と答えた。

ノフィカ

この日も石碑に向かう。二人で石碑に向かい祈りをささげた。
今日も誰もいない。マスターに伝えなきゃ。私の気持ち。
「マスター、ありがとう。今、この世界を楽しめているのは、マスターのお陰だよ。」
「そんなことないよ、プリムさんなら、いつか立ち直れたはずだよ。プリムさんなんだから。」
「そんなことないよ。自分じゃ気が付かないことなんてたくさんある。」
「見て見ぬふりなんてできなかったよ。だって僕自身だって悲しみの中に居たんだから。僕も気づかせてもらった。でもそれって。自分で気が付くしかない。僕は、ただ、そこにいただけだよ。ただ、横に立ってることしかできなかったよ。」
「それだけで十分だよ。だからそばにいたい、そばにいてほしい。」
僕は、返す言葉がなかった。気が付かないふりをしてた。プリムさんの気持ち。僕は臆病だから。

ナルザル

ウルハダ
この日も石碑に向かう。二人で石碑に向かい祈りをささげた。
今日は誰もいない。マスターと二人だけで話したことはこれまでもある。FCに入る前は、私がボッチだったのでいろいろ負担掛けたと思う。思うだけで、彼に気持ちを伝えたことはない。FCメンバが、これまで、彼に思いを伝えていた。私も伝えたいと思いった。そしたらマスターが話し出した。
「プリムさん、いつもありがとう。カンパニーアクションの維持を全部任せちゃって。みんなの冒険を支えてくれて、本当に感謝しています。」
「私は、サポート好きだから。みんなの冒険の助けになっていればうれしいよ。」
沈黙が続いたので、私が話し出そうと思ったら、マスターが突然、
「ごめん。嘘ついた。」と言った。
「みんなの気持ちじゃないよ。僕は怖がりだから、自分の気持ちをみんなの気持ちにした。プリムさんには、ずっとそばにいてほしい。何もしてくれなくたっていい。ただいてくれれば。それだけ。」
私が話すタイミングがなくなった。知ってた。多分。マスターの気持ち。

アーゼマ

東ザナラーン
この日も石碑に向かう。二人で石碑に向かい祈りをささげた。
ここでもFCメンバが待っていた。
「僕、ここで、マスターにナンパされてFCに加入したんです。覚えていますか。駆け出しで、まだチョコボもなくて、でもマップ開くのが楽しくて。ウルダハ出身だったんですけど、グリダニアまで歩いて行けると聞いて、歩いていくことにしたんです。でもだんだんモブが強くなってきて、モブに絡まれて逃げ回っていたんです。その時、タンクのマスターが、敵視を集めて、殲滅してくれました。僕、グリダニア目指していますというと、マスターは、“本当にいくの、1人じゃちょっと危険だよ”と止めようとするんです。帰ろうかなと思ったら、パーティ勧誘が来たんです。“二人ならいけると思う。”といって、先導してくれました。モブに絡まれても敵視は、全部、マスターがとってくれるので、安心して進めました。東ザナラーンから南部森林、中央森林を縦断するので結構な距離でした。しかも、全部のエーテライトとチョコボポーターを開放していきました。その間、マスターとずっとおしゃべりしていました。楽しかったです。今考えると大した冒険じゃないんですけどね。なんか、グリダニアにつく頃に、FCに加入することになってました。帰りは、付き合わせられないので、デジョンでウルダハに帰りました。やりたいことが何でもやれる。挑戦をあきらめさせない。そんなFCですね。だから今日を楽しめています。」
「そんな時あったね。マスターになって、初めて募集出しても、全然人が来なくて、実際困ってたんだよ。入ってもらえてよかったよ。」

ラールガー

南ザナラーン
この日も石碑に向かう。二人で石碑に向かい祈りをささげた。
ここでもFCメンバが待っていた。
「私、新人のころ、フレの紹介でここに入ったんです。フレが気が利く子で、ストーリーに先回りして、私が進めやすいようにしてくれてたんですよ。だから、FCもそういう物だと思って、私が新しいID開くたびに、私からお願いしないで、フレを通じで察してアピールしちゃったんです。ある時、フレが私のその様子をみて、“いい加減にして、FCは、一方的にサービスする場所じゃないから。”と怒らせちゃったんです。私MMOも初めてで、コミュニケーションの取り方わからないし、どうしようと困ったんです。その時、ハウスの庭にプリムさんがいたんです。勇気出してID一緒に行ってくださいとお願いしたら、いいよと言ってくれました。ID攻略後にフレにもなってもらいました。わたし、そのフレ以外とあまりしゃべったことなかったので、フレ怒らせたこと、相談したんです。“まず、素直に謝ればいいんじゃない。後は、周り観て自分ができること探してみたら”とアドバイスもらいました。」
「そんなことあったけ、いやあ、覚えてないな。」と私。
「フレには、プリムさんとのこと話して許してもらえました。今でも親友です。でも、私、レベルも低いので、何ができるかわからなかったんです。とりあえず動こうと思って、カンパニーチェストに入っている素材で自分のギャザラーレベルで集められるもの集めて入れてみました。プリムさんからお礼のチャットが来て、なんかうれしくなって、ギャザクラが楽しくなりました。お陰で今日を楽しめています。」
「思い出した。エーテリアルホイールの素材がチェストに一杯入っていたんだよ。あんときはうれしかったー。だってマスターも集めてくれないから。」
僕は、ヤバいと思った。後で、ちゃんとねぎらっておかなきゃ。

ビエルゴ

黒衣森南部森林
この日も石碑に向かう。二人で石碑に向かい祈りをささげた。
「今日は、誰も来ないみたいだね。プリムさんは、幻術士で始めたから、ホームタウンは、グリダニアなんだよね。」
「最初はそうだったんだけど、彼のホームタウンがリムサだったし、忍者始めたのでリムサに引っ越したよ、だいぶ前に。マスターはどこがホームタウンですか。」
「僕ですか。剣術士で始めたのでウルダハがホームタウンです。ほら、最初は、ロールとか知らないからナイトとかあこがれるでしょ。」
「そうだね、私も白魔道士にあこがれてた。」
「プリムさんは、今じゃ立派な姫ちゃん白魔道士じゃないですか。すごいですよ。目標実現できていて。」
「いや、今でも覚えてますよ。マスターの厳しい姫ちゃん指導。迷いがあったから今があるんだけど。自分は、サポートが好きと言ってるわりに結局みんなに支えられている。」
「そんなことないですよ。この旅で、色々わかったじゃなないですか。支え合っているんだって。実際、1人でもやっていけますよ、プリムさんは。やってたし。でもここにいてほしいです。プリムさんには。一緒に。本当に。・・・。」
僕は、伝え方がわからない。やっぱりまだ怖いんだと思う。
「マスターも1人でやっていけるでしょ。私が1人の時に、寄り添ってくれてた。でも、背負ってるものが私とは違うから。私も覚悟を決めて、支えないといけないですね。」
私の伝え方が回りくどいね。これじゃ私の気持ち伝わらないかな。テレポでも、フライングマウントでもすぐにFCハウスに戻れるのに、この日は二人して歩いていた。なんか楽しかった。

オシュオン

外地ラノシア
この日も石碑に向かう。二人で石碑に向かい祈りをささげた。
ここでもFCメンバが待っていた。
「私、かまってちゃんじゃないですか。その時、自覚なかったんですけど。当時まだリセ日とかパッチリリース日とか知らなくて、みんなが忙しい時に、ルレ付き合ってもらえなくてすねちゃったんです。マスターに、みんなから無視されたと相談しに行ったの覚えていますか。その時、マスターが、いきなり、FCチャットで、ルレ募集出すんですよ。誰も手を上げなくて私びっくりしちゃった。マスターでも集まらないんだって。ちょっとして、プリムさんがきて、3人でルレ行きましたね。」
「みんな忙しいタイミングがあるんだよ。気軽に断れないと気軽に誘えないでしょ。でもやっぱり僕だって、断られるのは怖い。その時はプリムさんを誘う。プリムさんは断らないから。」
「私、マスターでも断っていいなら、私なら仕方ないよねと思ったのと、忙しいタイミングがあるんだと教えてもらった。それから、募集が集まらなくても凹まないで自分で楽しむ方法を見つけるようにした。そしたら自然とみんなが集まるタイミングが見えてきた感じ。今日を楽しめてます。」
いや、私も断るから素材集め忙しんだよ。