エオルゼアにやってきました。ジェイシー クラッシュです。よろしくお願いします。
Jc Crash
エオルゼアにやってきました。ジェイシー クラッシュです。よろしくお願いします。
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僕のジョブは、格闘士。男っぽかったし、キャラ作るとき、なんか殴りたい気分だったので。
カコちゃんに言われた通り、初心者の館のクエストを全部うけた。初心者の館は、西ラノシアのエールポートの近くにある。ウルダハからは、ちょっと遠い。カコちゃんからは、各冒険者ギルドでもクエストは受けられるけど、初心者の館の近くにどうせ行くことになるから、フェリーに乗れるなら、フェリーと船乗り継いで行ってもいいかもと言われていた。小旅行気分で、ウルダハからベスパーベイまでチョコボポーターで移動して、フェリーでリムサへリムサの漁港まで移動して、船でエールポートに移動した。初心者の館は、エールポートを出てすぐのところにある。
初心者の館では、なんか、攻撃の仕方、よけ方、複数の敵との対峙の仕方、ギミック処理、パーティプレイなどを学んだ。なんかできる気がする。装備は、胴、手、脚、足の4つとビギナーリング(指輪)をもらった。カコちゃんには、頭と指輪1個以外のアクセサリーはもらえないと聞いていたので、これで全部だとわかった。着替える。おー、ビギナー装備ってかっこいいんだね。なんか強くなった気がした。あと、ビギナーリングは、レベル30まで経験値ボーナスがあるのでつけておいてと言われていたので、忘れずにつける。カコちゃんのアドバイスは、至れり尽くせりだ。
キャラ操作時の私の心が男子になっているのかわからないまま、レベルを上げていった。ゲーム自体は、楽しいけど、当初の目的、男の心を知るはつかめていない。山田君に言われていたレベル15になったのでどうすればいいのか聞くために、またお昼に山田君を誘う。
「レベル15になったよ。ジョブクエも終わったよ。」
「おめでとう。じゃ、初心者の館ですね。ここで戦闘の基本を学びます。全部のクエストを受けてください。クエスト受けるとビギナー装備を一式もらえるのでそれに着替えて下さい。ストーリーも進めてくださいね。最初のインスタンスダンジョンに行けるようになったら、また、連絡ください。一緒に行きますから。」
「わかった。ところで、カコちゃんには、恋人とかいないの。結婚システムとかあるみたいじゃん。」
「エタバンのことですか。カコには、恋人いませんよ。ソロプレーヤーです。」
「じゃ、私が、なってあげるよ。男子の気持ちが知りたいんだよね。」
「やめてください。同情ですか。同情は必要ありません。」
本気で怒っているみたいでびっくりした。
「ごめんなさい。軽率だったね。」
私、冗談のつもりだったのかな。カコちゃんには、良くしてもらってるし、山田君のことかわいいと思ったし、元カレにも未練もあるし。複雑な感情が混じっていた。
レベル1から武器を持った状態で格闘しギルドに向かう、まず、クエストを受注。町を出たところのモブを数匹狩るだけの簡単なお使いだ。でも町の出口は、2~3か所あるので、出たところに対象のモブがいないときは、別のところに探しに行く。
直ぐにレベルが上がるので、レベル5までレベル2、3のモブを狩ってあげてしまった。
ギルドに戻り、マスターに結果報告。報酬がもらえる。武器とか装備がもらえるのでその都度、自分の着ている装備を更新する。レベル5のも同じような内容。ジョブクエストにもストーリー要素が入ってきて面白いと感じた。メインストーリーも同時に進めていく。初期のメインストーリーは、まだ先が見えず、お使い要素が強い。移動手段も徒歩が中心なので結構面倒だ。コツコツタイプの人は大丈夫だけど、いらいらする人もいるかもね。僕は、目的があったし、男子キャラを操作するのが新鮮だったので、楽しく進められた方だと思う。
山田君との約束通り21時にウルダハの冒険者ギルドに向かう。Kako Avenirさんはすぐに見つかった。衣装がすごくかわいい。僕の初期装備とは大違いだ。
「こんばんは」「こんばんは」とあいさつを交わす。
「なんと呼べばいいですか」と山田君、いやカコさんかな。
「難しい名前にしちゃったんだよね。ベンタでいいよ」
「じゃベンタ君と呼びますね。私は、カコでいいですよ。」
「じゃ、カコちゃんと呼ぶね。」
「ベンタ君は、まず戦闘職のレベルを15まで上げてください。レベル5個ずつにジョブクエがあるので、必ずそのタイミングで受けてくださいね。フィールドのモブを狩るだけでも、結構、レベルあがるのでガンガン上げていきましょう。」
「わかった。やってみる。じゃ行ってくるね。」
「まって、フレンド申請するから。」
フレンド申請が、カコちゃんからきた。初フレンドだ。カコちゃんの名前の色が変わった。
「友達になると名前がオレンジ色になるからわかりやすいでしょ。ベンタ君に付き合ってあげたいけど、私にも予定があるので。ごめんね。わからないことが出てきたらTellして。」
「わかった。カコちゃんありがとう。」
なんか山田君のしゃべり方、女性のしゃべり方に感じる。
ゲームの進め方を聞きたかったのでお昼に山田君を誘う。
「ホントに始めたんですね。」と山田君。
「キャラまで作ったんだけど、これからどうすればいいのかな。」
「チュートリアルに従って進めればいいんだけど・・・・。不安ですよね。今日、何時に、ゲームに入りますか。」
「21時くらいかな。」
「クラスは何で始めましたか。」
「格闘士だよ。」
「では、ウルダハの冒険者ギルド クイックサンドで待ってます。僕のキャラネームは、Kako Avenirです。種族は、サンシーカーのミコッテ女子です。」
「私のキャラネームは、Ventum Viatoremで、種族は、ミッドランダ―の男子だよ。」
「本当に男性キャラなんですね。」
「そんなに変?」
「いいえ、そんなことないです。じゃ、夜に会いましょう。」
男の気持ちを知りたいといっても、リアルで男性になれるわけではない。そこで山田君から聞いたオンラインゲームを始めることにした。その世界で、私は男性になることにした。
フリートライアルで無料で始められると山田君から聞いていた。ノートPCは持ってたけどゲーミングPCを持ってなかったのでゲーム機も買う必要があったし、それなりの覚悟で始めたかったので、オンラインストアで製品版を購入した。
私は、男子キャラを作った。ヒューランミッドランダ―のイケメン男子だ。エレゼンやヴィエラにも惹かれたけど、男の気持ちを知るなら、なるべくリアルに近い見た目の方がいいよね。男子キャラだから一人称は、これから僕にするよ。
僕の名前は、「Ventum Viatorem」。ラテン語で「風の旅人」という意味。ヴェンタム ヴィアトレムと読む。長いので結局ベンタと呼ぶことにした。
このキャラで、男性として世界を見てみよう。どんな風景が見えるのかな。新しいことを始めて今の傷心を癒そう。
でも、何にもわからないのでまずは、山田君に進め方をきこうと思った。
大学入学、私は、ど田舎じゃないけど都会ではないところから出てきた。初めての都会、初めての一人暮らし。私もそんなに羽目を外す方じゃないし、門限みたいに夜に親から連絡が入るので、自由はそれほど感じなかった。それでも2年生になると、友達も増えて、親も私を信頼したのか飽きたのか連絡の頻度は減っていた。自由が増して、そんな時、彼から告白された。同じサークルの同じ学年。サークルで頑張ってた彼を見てたし、信頼できた。一緒に遊ぶようになって、楽しいと感じていた。3年になるとサークルでも責任のある立場になってお互い助け合ってきたので、さらに絆は深まったと思っていた。
ちょっと、離れたのは、就職活動の時、将来のこと考えると、考えの違いが見えてくる。お互い必死だから、相手を思いやる余裕がなくなる。それでもそれが過ぎれば、元に戻ったと思っていた。卒業して離れ離れになる。今までより遠いけど、1時間弱で行ける距離。卒業から就職までの間、色々引っ越しとかで忙しかった。それでもそれなりに二人の時間を作って、絆を確かめられた。少なくともその時は、そう思ってた。
新しい生活が始まると、目の前のことでいっぱいになる。優先順位も変わっちゃうよね。お金は自由になったけど、時間の自由は、激減した。お互いの生活リズムも変わるし。思いやることと、面倒なこと、遠慮することが良くわからなくて、都合よく言い訳につかう。週末も本当に疲れていて、会いたいのと休みたいのを天秤にかけるようになる。それじゃ長く続かないよね。でも君から・・・。
昨夜、泣きはらしたけど会社は、休めない。今日は、同期の山田君と一緒に研修があるので、私が抜けると指導する先輩に悪い。何とか出勤した。会社に来れば気持ちも切り替わり、表向き普通になった。昼休み、一緒に昼食をとる同期女子とタイミングがずれたので、今日は、研修が一緒の山田君と食堂に向かった。
山田君はよく見ると童顔っぽい柔らかい見た目だ。ふられたせいか、そんな山田君がちょっとかわいいと今日は思えた。
「山田君は、休みの日とか何してんの」
「僕ですか。大体、オンラインゲームに入ってますね。」
「そうなんだ。彼女とかと遊びに行かないの。」
「彼女いない歴イコール年齢です。僕は。」
「そーなの?嘘ついてない。」
「嘘じゃないですよ。ゲームの中も女性キャラなので恋できてないですね。」
「えっ、山田君の操作するキャラの性別は女性なの。」
「そうですよ、別にキャラの性別は自由ですから。かわいい女性キャラです。変ですか?」
「よくわからいけど。女性が男性やってもいいんだよね。」
「もちろん大丈夫です。そういう人も実際いますし。」
「変なこと聞くけど、キャラ動かしてるときは、どんな気持ちなの。」
「うーん、いろんな人いますね。分身として同一視してる人もいるし、ただ操作しているキャラと割り切ってる人もいるし、それぞれじゃないですか。僕の場合、同一視はしてないけど結構感情移入していますね。」
「さらに変なこと聞くけど、その時の山田君のこころは、男性、女性?」
「どうしたんですか。うーん、深く考えたことないですけど、女性なんですかね、男性ではないですよ、多分。」
「ちょっとそれ始めたいんで、詳しく聞いていい。・・・・。」
私は、山田君からゲームの始め方を詳しく聞いた。
彼からの突然の連絡
「ごめん、もう会えない。」
それだけだった。理由を聞いても
「気持ちが冷めた。君への思いがなくなった。」
と言われた。
だから、「そうなった」その理由が聞きたいの。教えてよ。それっきりだった。
大学の時、告白してきたの君じゃないの。就職でちょっと離れて、距離ができたからなの。新しい環境で新しい出会いがあったの。私、結婚だって考えてたんだよ。私の時間返してよ。そんなことする男の気持ちが知りたい。本当に、そう思った。
僕は、彼女を思った。プリムさんの顔しか浮かんでこない。心の中には、あったかくて切ない思い出が確かにあるのに。
私は、彼を思った。マスターの彼のことしか浮かんでこない。心の中には、熱くてほろ苦い思い出が確かにあるのに。
私は、彼にお願いした。ダイヤモンドリングを作ってと。私が作ったリングは彼にあげた。彼が作ったものを私がもらった。私たちは、公式のエターナルセレモニーをするつもりはない。だって、もう正式な儀式は終わっているし、大切なアイテムもたくさんあるから。いまからやっても公式なだけで本物じゃない。彼のもとにテレポできないのは不便だけど、その時は呼び出せばいい。いつだってすぐに来てくれてたんだから。
私の明日が来なくなる日がいつかなんて分からないけど、いつかは来るんだよね。誰にでも。私がインできなくなる日が来るかもしれないけど、今日を大事にしていれば後悔なんてしないよね。今日を楽しんでいれば、その時、彼だって悲しまないよね。なんか、わかった気がした。わかった気だけだけど。今日も彼とこの世界を楽しもう。そうだ、彼に会いに行こう。
おしまい