気持ち

彼女は、誰にでも気軽に声をかけることができ、誰とも仲が良かった。

憧れの気持ちが湧いた、異性に対する気持ちだったかもしれないがその時は、気がつかなかった。

ルーレットには、一緒に行くことが増えたが、それ以上の難しいコンテンツへの参加は、プレイスキルが圧倒的に不足しており参加できなかった。

自分の戦闘能力の低さを恨んだ。木人に向かったり、練習でダンジョンにもぐったり自分なりに工夫は重ねてはいた。飛躍的にうまくなるわけはなかったが、彼女に成長したと褒められるとうれしかった。 マスターとサブマスターとFCの何人かメンバで固定を組んで高難易度コンテンツに挑んでいた。僕は、その中に入ることは夢のまた夢のため、あきらめと同時に、焦燥を感じていた。何時になったら追いつけるのだろう、追いつけるのだろうか?と。

クエスト4 「異端審問官」

兵士は、駐屯地に赤ん坊を連れて戻り、顛末の報告をした。駐屯地には、教皇庁から派遣されている異端審問官がいた。

状況から両親は、盗賊に殺されたと判断された。しかし、盗賊は、竜に襲われ、なぜ赤ん坊だけ助かったのか、しかも竜に導かれ発見された状況が憶測を呼んだ。異端審問官は、竜の行動をいぶかり、両親を異端者、赤ん坊を異端者の娘と断じて、教皇庁へ報告した。

赤ん坊は、教皇庁内の孤児院で育てられ、幽閉され続けることになった。

イベント参加

討滅戦へバーティ募集があった。自分も参加できるコンテンツなので、応募した。

仕切っていたのは、サブマスターの彼女だ。彼女は、会話の起点を作って、コミュニティを盛り上げていた。

マスターは、逆にどっしり構えた人で、あまり前に出るタイプではなかった。

参加予定の8人がそろいイベントが始まった。コンテンツに突入。たくさんのメンバが初見だからギミックがわかっておらず、ワイワイ攻略を楽しんだ。この時、うまく立ち回りたいとか、そういう気持ちはなくなっていた。純粋に協力プレイを楽しんでいた。

マスターがMTだった。自分はSTを担当した。彼女は、ヒーラーだった。自分よりレベルが高く、全然うまかった。偶然、あそこで出会った彼女は、サブジョブで無理に敵を集めた結果だった。自分が助けるようなスキルレベルでなかった。 何度か全滅して、ギミックがわかってきて、いよいよ、次こそはという雰囲気が漂っていた。何もかも忘れ、戦闘に集中した。倒し切った時には、達成感で、思わず声が出た。みんなで、撮影会を行って、イベントが終わった。

Free Companyにはいる

ある時、彼女の入っているFC(フリーカンパニー)への加入の誘いがあった。彼女は、FCのサブマスターだった。

マスターさんにあいさつした。マスターさんは、男性キャラでよい人そうだった。加入を決めた。

この世界にだいぶ慣れてきて、交流をしている人たちが羨ましかった。通りで会話している人がまぶしかった。自分も、そろそろどこかに入ろうかなと思っていたので、いい機会だった。メンバさんも、お手伝いで会った人がいて、いい人ばかりだ。 FCの加入は新鮮だった。彼女を中心に、他のメンバとの交流も生まれた。

クエスト3 「始まりの出来事」

彼女を発見した当時の兵士が、雲霧街にいることを聞きつけた。彼女とその元兵士に会いに行った。

クルザス西部高地をいつものように警備していたところ、竜が1匹遠くに見えた。1匹だけだったので、駐屯地へ戻らず行方を追うことにした。

不思議なことに竜は高く飛び去らず、低空をとび、時折、地上におり休み休み移動していた。そのため、竜を見失うことなく追いかけることができた。

赤ん坊の泣き声が聞こえ、兵士がそれに気が付くと竜は、それを確かめたように飛び去って行った。

陸灯台の近く、そこには、両親の遺体と盗賊の無残な死骸があった。両親は、刀傷が死因である。赤ん坊は、両親に守るように覆いかぶさっていた。 盗賊は、明らかに竜に襲われ、体が引き裂かれていた。何があったかわからないが、兵士は、駐屯地へ赤ん坊を連れて帰った。

交流

いつものようにこの世界に入った。友達の状況は確認できることを知った。彼女も入っている。といって、何をやっているのかもわからず、コンテンツに誘うことなど想像もできなかった。

淡々と日課の処理を始めた。この日常が楽しい。レベルも上がり、成長の喜びがある。

そんな中、突然、チャットが飛んできた。「今暇?」彼女からだ。まあ、暇なので、暇ですと回答。どこまでのレベルのダンジョンいける?

短い会話のあとに、パーティ勧誘の通知が来た。パーティに呼ばれるのは、初めてだ。

彼女の友達の攻略を手伝ってほしいとのことだった。自分には、見慣れたダンジョンで、問題はなかった。

が、知り合いと行くのは、初めてだ。自分が下手だとは思われたくないという変な気持ちが湧いてきた。人間って不思議、知らない人と行くときの方が緊張しないんだ。うまく立ち回ろうとすると、かえって空回りする。へとへとになって終わった。問題はなかったし、お礼も言われた。でも、すごく凹んだ。

劣等感が自分を支配する。なんで人の目を気にするんだろう。こういう、誘いが、何度か続いた。

クエスト2 「幽閉生活」

彼女は自分のことをほとんど知らない。教育は、教皇庁から派遣された教師から一対一で受けていたと言った。読み書きはできたが、それを使う機会は、看守と言葉を交わす程度しかなかった。身の回りの世話をする大人は、話すことを禁止されているのか、異端者とは話したくないのかしゃべることはなかった。当然、面会に来る人もなかった。幽閉された狭い世界がすべてだった。

彼女は、突然何かがあってその状況になったのではなく、物心がついたときから、初めからその状態だったのだ。それが彼女の日常だった。生きたいとか死にたいとかそういうレベルの話ではないのかもしれない。竜と異端者の娘として生きることしかなかった。異端者の娘を演じることが彼女の生きる術だったのかもしれない。

看守から聞かされたことは、クルザス西部高地の僻地で陸灯台の管理と竜の監視のために赴任していた夫婦の家の近くで発見されたとのことだった。竜を追っていた、兵士に発見されたことだけが彼女を知る手がかりだった。

再会

友達はできた。でもかかわり方がわからない。当然、こっちからなんの連絡もしない、できない。

今日もいつものルーティンを回す。ダンジョンを申請。もう申請に悩むことはない。なれた物だ。それだけ、この世界になじんだということである

いつものように、あいさつし、うまくなりたい(うまく見られたい)とスキルを回す。

終わった。報酬をもらって、ダンジョンから出るのだが、僕は、操作が遅いので、いつも最後になり、僕が出るときには、誰もいない。

でもこの日は違った、だれか残っている。しかも、ぴょんぴょん跳ねている。名前を見ると、あの時の彼女だ。固まっては、ダメだと、「お疲れ様」とあいさつした。

会話が始まった。あの時はありがとうと、またお礼を言われた。助け合うのがこのゲームの基本で特別なことをしたわけでないので、そこまでお礼はいらないと伝えた。

こんな偶然があるんだねと、初めて画面の前で笑った。ストーリーで笑うことはある。当然、楽しいから続けているんだ。 でも、人とのかかわりで笑ったのは初めてだ。なんか新しい気持ちが沸き上がったことを感じた。ダンジョンで長話もなんなので、ちょっと話して、ダンジョンを出た。ダンジョンを出ると、それぞれ、ダンジョンに入る前の場所に戻るので、その時は、そのままわかれた。

クエスト開始 「竜の少女」

このサブクエストは、竜詩戦争の中、幽閉された異端者の娘とされる少女が主人公だ。

竜詩戦争が終わり、竜との和解が高らかに宣言され、異端者も開放され始めていた。

その中に赤ん坊で発見され、16年間幽閉されて育てられた少女がいた。

竜の子と呼ばれる少女は、雲霧街の顔役のヒルダに預けられ、仕事のあっせんをうけた。

しかし、その仕事場でも差別にあって、虐待されていた。虐待されていたところを冒険者の僕が助けたことからこの話は始まる。

彼女の最初の言葉は、「お礼は言わない。だって私、異端者の子供だから。いじめられて当然。」だった。

出会い

ストーリーは楽しい。相変わらずボッチのままだ。ストーリー中は、ソロで自分のリズムで進めるのが良いというネット情報を言い訳にして、交流に踏み出すことはなかった。

当然踏み出す、勇気などあるわけもない。どうやって、人とつながるのか、そのきっかけさえ分からなかった。

ある日、森を移動していると、戦闘が起きている。ふと見るとHPが激減しているプレーヤーがいた。タンクなので敵視を取って、救おうとしたが、間に合わず、プレーヤーは、倒れた。直ぐに敵を処理して、そのプレーヤーを見るとまだ、倒れたままだ。始めたばかりのヒーラーに着替えて蘇生した。プレーヤーは起き上がった。彼女はエレゼンの女性キャラだ。ぺこりとお辞儀して、ありがとうと言われた。

人から言葉をかけられたのは、はじめてなので、チャットの返し方も、身振りの返し方もわからなかった。

ぼったちしていた。気まずい。たぶん彼女も困っていると思う。汗が出てきた。

ピコっとなんか通知が来た。フレンド申請だ。フレンド申請を受けたのは、初めてではない。

何度か、町で、知らない人からいきなり申請されたことがある。当然、怖いので、断り続けていた。

友達になった。こんにちは、とあいさつした。どうしていいのか頭が真っ白になってとりあえず、サヨナラの身振りをして、飛び立った。本来の目的地のクエストに向かって。