FC設立

3人でFCを設立することした。設立のためには、もう一人必要だった。ボッチの僕には、彼女以外に頼めるような人もいなかった。彼女が、昔のフレンドと連絡を取って、署名協力者をお願いしてくれた。彼女のフレンドは、彼女が昔の姿で名前を変えて、ゲームを続けていることに驚いていたが、快くFC署名に協力してくれた。無事FCの設立ができた。
言葉通り、彼女がマスターになり、僕が立場上、サブマスターになった。ここで彼女から「メンバ募集します。3人じゃ、IDに行くにも不便なので。イケメンを最低1人入れます。」と宣言した。
なんで、「イケメン」なんだよと思ったので、彼女と二人だけの時に聞いたら「餌だよ餌。男子1人だといろいろ問題だろ。」と恫喝気味に言われた。何が問題だ?と納得いかなかった。
しかしなから、応募してきたのは、アウラの女子キャラだった。ストーリーの進捗もYさんよりちょっとだけ進でいるだけなので、ちょうどよかったので参加をお願いした。
FCの面接で、中身は、男性です。と告白した。まあ、女子キャラのおおくは、中身男性なのは、知っているので、問題ないよと答えた。その後、応募は全然ない。結局、イケメンキャラの加入はなかった。

幻想

次の日、彼女の見た目が変わっていた。というより以前の姿に戻っていた。
ララフェルからエレゼンフォレスターに変わっていた。びっくりして開口一番「どうしたの」ときいた。
「んっ。気分。だってララフェルじゃミコッテの女子力と勝負にならないじゃん。思い出バイアスをフル活用だよ。」と返ってきた。“何の勝負だよ。”と思ったが、彼女が過去のことを吹っ切ったんだなと思うと、ちょっと嬉しかった。
今日は、Yさんの初めてのID(インスタンスダンジョン)に付き合う予定だ。Yさんも彼女を見て、最初、「誰?」となっていたが、名前見て、「これが噂の幻想なんですねー。すごいなこのゲーム。」と感心していた。
僕がタンク、彼女がヒーラー、Yさんが巴術士でCF(コンテンツファインダー)に申請。カンスト(カウンターストップ=上限値に達した状態、ここの場合ジョブレベルを指す)組が二人いれば、最初のIDは、サクサクだった。
IDの後、Yさんが「ありがとうござます。助かりました。ドキドキですね。」と興奮気味に話し始めた。「今後も3人で進められるとうれしいな。FC(フリーカンパニー)だっけ、ギルド立ち上げましょうよ。」と興奮ついでに提案してきた。
僕は当然戸惑っていたが、彼女はちょっと考えて「いいねー。そうしよう。FC経験から私がマスターね。」といった。
彼女が自分からマスターに立候補したのは、びっくりした。僕にさせなかったのは、やっぱり、マスターの事、引きずっているのかな、と思った。

登場

その夜、エオルゼアにインすると、彼女は既に入っていた。彼女に、職場のYさんがFF14を始めたので今日会うことになっていると伝えた。最初は、興味なさそうだったが、Yさんが部下の女性だというと、私も行くと言ってきた。
溺れた海豚亭について、気が付いたのだが、Yさんの名前を聞くのを忘れていた。見た目もわからないので若葉で初期装備っぽいキャラを探す。Yさんは、壁紙のSSで僕のキャラを知っている。
若葉の一人が、僕に気が付いて、走ってきた。名前を見ると「Takuya Y」となっている。男?見た目は、ミコッテ ムーンキーパーの女性キャラだ。「こんばんは」挨拶が来た。
「Yです。」と本名を名乗った。「Takuyaさん??」、「弟の名前です。名前決められなかったので、名前もらいました。苗字も取るとかわいそうなので、イニシャルのYだけにしました。」といった。Yさんと呼ぶことにした。
「こんばんは」と彼女もあいさつした。
「えーっと、お友達ですか。」とYさんが彼女のことを聞いてきた。
「そうです。Hotさんです。」と彼女を紹介した。彼女は、「Hot Spiceです。よろしく。」とあいさつした。Hot Spiceは、以前のキャラ名とは違う。彼女が、ララキャラを作った時に適当につけた名前だと聞いていた。
「知り合いがいると心強いですね。お友達になってください。」と言ってきたのでフレンド申請をした。彼女も同時にフレンド申請をしたようだった。Yさんに僕と彼女2人で、ゲームの進め方などのアドバイスした。Yさんは、ありがとうと言って、レベル上げてくると旅立った。
この日は、残りの時間で、装備更新のトークンを稼ぐため、いつものように二人でルレを回った。

近況報告

僕は、Jc Crash。読みは、ジェイシー クラッシュだ。FF14を始めて1年が過ぎ、最新ストーリーにやっと追いついた。中堅のプレーヤーに含まれるのかな。メインロールはタンクだ。
僕には、相棒のヒーラーがいる。ララフェルの女性キャラだ。コミュニティには入っておらず、二人で野良パーティを中心にプレイしている。
彼女の方がプレイ歴が長いが、キャラを作り直した関係で、ストーリーの進捗がほぼ同じような状況になった。先月2人そろって、最新コンテンツに追いついた。
彼女から「最新のエンドコンテンツに行けるようになったので、どっかのFCかCWLSのコミュニティに入らない?」と提案があった。
二人ともコミュニティに入いらず、二人で協力してここまで進めてきた。まあ、フレンドがいれば心強いし、しかも相棒のヒーラーがいれば、ノーマルコンテンツで困ることはない。
少し考えてから「そうだね、何をしたいかだよね。」と僕は、彼女の問いについて先送りにするような回答をした。
彼女は、間髪入れず「家が欲しい」と言ってきた。
その提案の意味もよく考えず「お金もかかるし、そもそも土地がないよ。」と答えた。
すると彼女は、そのまま黙ってしまった。
突然コンテンツに突入する音がした。彼女から誘いでパーティに入っていたのだが、彼女が勝手にコンテンツに申請したのだ。タンクとヒーラーなのでルレの申請後、パーティはすぐに成立した。慌てて、準備する。DPSが二人入ったので、彼女に文句も言えないまま、コンテンツを進めた。
そんな二人だった。僕は、彼女との今の関係が心地良く、正直、この状態を変えたくなかった。

再開

今日もこの世界、エオルゼアに入った。今日は、丘に行くつもりはなかったが、ジョブクエストの関係で上空を通ることとなった。テレポすればもっと近道できるのだが、僕は、安易にテレポを使うのが嫌いだ。貧乏性もあるが、物理的な移動手段を用いた方が冒険感が高まるように感じているからだと思う。船と飛空艇での移動を優先する。リムサから今回もワインポートへテレポせず、コスタ・デルソルへ船で移動し、目的地までマウントで移動する。当然だが、チョコボポーターは、自分のチョコボを手に入れてからほとんど使わなくなった。

飛びながら、丘の上空から下を見る。人がいる。上空で立ち止まって、そのまま見下ろし、誰なのか確認しようとした。

知らない人がぽつんと座っている。そのまま飛び去ろうか迷ったが、話しかけたくなった。僕は身勝手だ、ボッチになったとたん人と話がしたくなる。

座っているキャラの後ろの方の少し離れたところに着地した。そのまま歩いて近づき、「こんにちは」と話しかけた。

若葉のついたララフェルの女性キャラだ。彼女は座ったまま「こんにちは」と返してきた。

僕は、「そこいいですか。」といって、回答を待たず、彼女の隣に座った。座ったと同時に「どうぞ」と返ってきた。

僕は「ここ夕日がきれいなんです。お気に入りの場所です。よく来るんですか?」と会話を始めた。

「このキャラでは、初めてです。前のキャラのフレンドが連れてきてくれた場所です。」

僕は、彼女だと確信した。でも、あえて白々しく知らないふりを続けた。

「そうなんですか、今どの辺まで進んでいますか?」

「まだ始めたばかり。」

「お手伝いしますよ。一緒にID行きましょう。」

「じゃ、ちょっとレベル上げるので。サスタシャにいけるようになったらお願いします。」

「了解です。フレンドお願いします。」

フレンド申請をした。彼女は、びっくりしたのか、ちょっと間があってすぐに承認が来た。

彼女は「成長したね」とぽつりと言った。

僕はそれを無視して。「そろそろ、いきますか?」と返した。

「はい、レベル上げてきます。」

二人は立ち上がった。

彼女は、僕が飛び去るのを待っているようだった。

「私、まだ飛べないよ。」と言ってきた。

「ですよね。じゃ、走っていきましょう。」

と僕は、駆け出した。行き先も聞かずに。勢いよく丘を駆け下りる。とりあえず一歩を踏み出したかった。彼女も、僕の後追って慌てて走り出す。その様子が、可笑しく笑いが込み上げてきた。

僕は、今日も、丘の上で夕日を眺めている。今、隣には、誰もいない。でも一人ではない。たくさんのヒカセンが一緒だ。

冒険は続く。僕らしく僕のままで。

おしまい

あの丘の上で

次の日、僕は、FCを抜けた。マスターからも先輩ちゃんからも引き止められなかった。先輩ちゃんから一言「行ってらっしゃい」とだけ言われた。

僕も、「行ってきます」とだけ返した。

今日はあの一連のクエストの最後のクエストを受ける日だ。クエストの地図は、コスタ・デルソルのあの丘の上を指している。偶然?、なんでと思った。

彼女との旅も今日で終わりだ。丘に登った、僕にとっては、見慣れたいつもの風景が目の前に広がっている。

彼女は、海の方を向き「お母さん、ただいま」と言った。黙ったまま、しばらく、やさしい海風に吹かれていた。

彼女は、母親に会えたのだろうか。そして、最後の時が来た。彼女は言った。

「ここは母が好きだった場所。母に会えたきがします。祖母あての手紙を読み、両親にちゃんと愛されていたんだとわかった。今まで自分の出生を恨んでたいたことが、バカみたい。私は今のそのままの自分を受け入れることができました。イシュガルドへ戻り、竜と人との交流に尽力したいと思います。今まで、一緒に旅をしてくれてありがとう。」

複数の返答の選択肢が表示された。あえて「・・・」無言を選んだ。言葉にできなかった。キャラデリして忘れかけていた彼女の顔が浮かんだ。 しずくが落ちた。あふれたものが頬を伝っていた。暖かいものが溢れて止まらなかった。

陸灯台の上で

「このキャラクターは削除されました」という無機質なメッセ―ジだけが彼女の痕跡となってしまった。

FCには、新しいメンバが数人入ってきた。若葉も混じっている。

新人ちゃんは、先輩ちゃんになっていた。相変わらずのなりきっていない姫ちゃん語だったが、若葉メンバを引っ張って、ダンジョンに突入していた。

新人ちゃんは演じているのだろうか。マスターは、演じることから解放されたのだろうか。

そんな時、新人ちゃん改め先輩ちゃんとFCハウスでばったり会った。

聞きたかったことがあった。先輩ちゃんに「その話し方時は、わざとやっているのですか」と尋ねた。

「これが自分。これが飾らない自分のしゃべり方だよ。」と返ってきた。

はっとした。そんな気持ちを整理する間もなく。「ちょっと時間ある。話したいことあるんだ。」と言われた。

「時間ありますよ。」と返した。「じゃ、外行こう。お気に入りの場所に。付いてこい。」と言われた。

ついたのは、クルザス西部高地のあのクエストの陸灯台の上だった。

今日は、珍しく快晴だった。一面の荒涼とした雪と氷の世界が広がっている。

「私、マスターと付き合ってるんだ」と話し始めた。

知ってるよと思ったが、「そうなんだ」と返した。

「ここ、マスターに教えてもらった場所。マスターが悩んだ時とか、一人で来るんだって。」

マスターもあのクエストを受けてここに来たのだろうか。ストーリーを進める上では、必須でないサブクエストを。

「この風景見て、思ったんよ。寂しいのかなって。色々話してみな。といったら、堰を切ったように話し出したんよ。」

「つらかったねとか、私みたいに、飾らなくていいよ。とか言ったんよ。そん時は。」

黙って聞いていた。なにか言い返す内容でもなかった。

日が暮れてきた、天気が良いまま夕日を迎えた。

「私が壊しちゃったのかな。FC。」と話が途切れた。

ちょっと考えて返した。

「いいや、みんな演じるのに疲れちゃったんだよ。きっと。演じてなかったのは、僕と君だけだったかもしれないね。」

でも僕の場合は、演じられなかったのか、演じることを知らなかったのか、演じきれてなかったのか、それさえはっきりわからなかった。

すっかり日が暮れて、オーロラが見えてきた。オーロラが出るなんて珍しい。幻想的な風景が二人を包んだ。

「14日は、マスターと二人でここにおったんよ。ずっと。怒っとる?」

関係のない二人が場違いな場所で二人だけという滑稽な状況に笑うしかないなと思った。

「怒ってないよ、怒る立場でもない。僕が僕の役割を演じず、勝手に行動しただけだよ。」

「寒いから戻ろうか」とパソコンの前の僕には、ありえない理由で会話を打ち切った。 先輩ちゃんも「寒いって?帰ろうか。」その場でわかれず、わざわざ、FCハウスまで戻ってから解散した。

崩壊

次の日から彼女がインしなくなった。僕は、あの後、彼女に会えていないので、彼女にマスターの気持ちを伝えていない。彼女は、気が付いていたのかもしれない。マスターの気持ちを。

彼女の不在は、FCの雰囲気を一気に悪くした。サブマスのフレンド組が、この件で、あからさまにマスターを非難するようになったからだ。彼女がFC運営の運営面を一手に引き受けていたので、FCのすべてが滞った。そう、彼女も理想の後輩を演じていたのかもしれない。組織を円滑に回すのは、それなりに苦労があったと思う。僕はそれにのほほんと乗っかっていた。自分の役割を理解も演じもせずに。

彼女が戻らないまま、数週間が過ぎると、フレンド組のほとんどがFCを抜けていた。固定も解散していた。公募組は、無関心なのか、逃避なのか、いつもの通りの日常を過ごしているように見えた。ここでも中途半端な自分を恨んだ。フレンド組なのに、なんの行動せず日々を過ごしている自分を。 人が減ったので、マスターが唐突にFCのメンバ募集を始めた。これが引き金だったと思う。彼女がキャラクターを削除した。

夜空

僕は、コスタ・デルソルの丘に戻った。彼女はもういなかった。夜だった。空を見上げた。星が瞬き、天の川が広がっている。

時折、流れ星が流れる。普通は、流れ星が消える前に願いごとをするのかなといきなり変なことが頭に浮かんだ。

今の願いは何かなと考えた。彼女の思いがかなうこと。僕の思いがかなうこと。どちらも自分勝手な願いだ。

僕のキャラは、今までと何も変わらない。当たり前だ、この世界でキャラを操作しているのは、パソコンの前にいる「僕」なんだから。僕は、自分勝手だ。何の結論も出ないまま、その日は終わった。

FCハウス

FCハウスの応接には、マスターと新人の二人がいた。

新人に聞かれても困ることはないと思ったのでSayでチャットを始めた。

「マスターは、サブマスの事、どう思っているんですか?」

唐突すぎるだろう。でも他の会話から始めたら、たぶん、この言葉は出なかったと思う。

マスターは、普通に、「すごく助かっている。運営面でも、フレンドがたくさんいて、イベントの主催とかできるし。」

と返した。そうだよね、「サブマス」としての思いを聞いたんだから・・・。

僕は、再度、「彼女、昨日会えなかったと言っていました。会えない理由がありますか。」

新人が席を立った。マスターに向かって「じゃ、後でね」といって、ハウスから出て行った。

新人は、いたって常識的な人だった。怒り出すでもなく取り乱すでもなく、その場をマスターにゆだねた。マスターは、新人を見送ると、しばらく黙ったままだった。

沈黙の後、ぽつりと語り始めた。

「彼女の気持ちは、ずっと感じていた。重荷だった。彼女の中の自分は、完璧な先輩だった。」

僕は、何も言い返せなかった。マスターも普通の人だ。ちょっと操作が上手いだけの普通のプレーヤーだ。

「FCマスターに担ぎ出されたのも彼女の提案で、彼女のフレの署名済みで、彼女のおぜん立てがすべてそろっていた。」

続けて

「彼女が自分に追いついて、高難易度に行きたいと言ってきときに、既に固定が組まれていた。自分は、固定主に収まっただけだった。」

そうだったんだ。マスターも理想の先輩キャラを演じていたんだ。

「彼女に愚痴なんて言えない。先輩像を壊すだけならいい。周りを巻き込んじゃうのが怖かった。」

「昔、一度だけ、彼女に愚痴を言ったこともある。固定メンバの一人が何度も同じミスを繰り返すので、軽い気持ちで、愚痴をこぼしたんだ。」

「そしたら、そのメンバが、ある日固定を抜けて、FCも抜けると連絡があった。理由を聞くと、彼女に強くミスを指摘され辛かったと言っていた。」

「それから、愚痴は言わなくなった。その環境に疲れちゃったんだと思う。彼女のフレでなく、何も知らない新人に愚痴を聞いてもらいたかった。」

この世界は、楽しいことばかりで、理想郷だと思っていた。僕だけがなじめない違和感を抱えているのかと思っていた。

そうではなかった。マスターも同じように違和感を抱えていたんだ。そこに気が付いたとたん、何も言葉が浮かんでこなくなった。

何をしにFCハウスに来たのかさえ分からなくなった。 思いついたのはただ、「すみません。」だけだった。その言葉の後、マスターは、ハウスから出て行った。僕だけが広い応接室のソファに残された。