季節

2月には恋人たちの季節が来る。この世界も例外でない。イベントがきっちり用意されているのだ。イベントは楽しい。でも僕には関係のない世界なので、純粋にイベントとして楽しむつもりだった。

今年は違った。年末のプレゼントが効いたのか、サブマスターからチョコをもらった。

びっくりした。僕にだけではないことは分かっているが、うれしかった。彼女曰く、お返しの負担になるので例年は、配らないとのことだった。お返し楽しみにと言えた。彼女は、気を使わないでと言ったが、いらないとは言わなかった。

世界が明るくなった気がした。数日後、イベントはまだ続いいていた。マスターとFCハウスで会って、チョコもらった?と聞かれた。

「サブマスターにもらいましたよ。」と答えた。マスターは?と聞き返したら、サブマスターと新人にもらったと答えた。

新人も配っているんだと思ったが、僕がもらえないことには、特に何も感じなかった。そうこうしていると新人が現れた

マスターは、じゃとあいさつして、新人とルレに行った。新人は、マスターとコンテンツに行っていたのだ。

だから何だということはない、別にいいではないか。好みは人それぞれなんだから。

マスター、サブマスターがいる固定組に異変があったのはその後だった。STが抜けたらしい。理由はよくわからない。STは、サブマスターのフレンドの女子キャラだ。

レベル的に僕がSTの代わりになることもできず、固定組は、活動停止状態になった。

FCの中から代わりに手を上げる人はいなかった。

僕は、フレンド組だったが、立ち位置は、公募組と変わらないところにいた。基本的に僕は全員と等距離で、誰かと深く付き合うタイプではなかった。なので、この時、FCの変化に僕は気が付くことはなかった。

新人

公募で新しいメンバが入った。ミッドランダーの女子キャラだ。レベルは、僕より低く、初心者に分類されるレベルだ。

それでも僕が一番、ストーリーの進捗が近かった。気を使って、ルレやストーリーコンテンツに誘った。

新人は、ヒーラーだった、僕はタンクメインだったので、一緒に行くのには、都合が良かった。最初は、みんなもついてきてくれたが、さすがにレベルが合わず、僕と二人だけの時が多くなった。新人は、女子力が高いミラプリのかわいいキャラだった。チャットの話し方も姫ロールプレイが入っているのかはいっていないのかよくわからないしゃべり方だった。僕は、それがとても苦手だった。どういう風に返していいのかわからないからだ。

まあ、コンテンツに入れば、会話しなくてよいので、コンテンツのエスコートだけでして、終了早々、次の予定があると偽って解散していた。

予定は、あるのはうそではない。みんなそれぞれやりたいことがあって、時間が無いことは、同じだ。ただ、確定した予定は、僕にはほとんどない。ボッチだからだ。いくらでも予定は動かせる。フレンドとの約束はほとんどない。急に呼ばれて手伝うことくらいだ。自分から物を頼むのは苦手なので頼まなきゃならないようなコンテンツには手を出さないでいた。

新人との仲が深まることもなくいつもの日常が過ぎていった。

ある時、インするとFCハウスにマスターと新人の二人がいて、僕が混じり、3人になった。

新人が、前回のダンジョンでの話を面白く話していた。話し好きのようだ。

マスターも気を使っているのか、相づちや、質問などで盛り上げていた。僕は、そういうのが苦手なので、マスターに適当に合わせていた。

一通り話が終わり、ルレに行くことになったが、タンクは2人らないので、マスターがタンク、自分がDPSに着替えた、新人は、いつものヒーラーだった。

特に問題なく終わり、僕は、いつものように、次の予定を装い早々にパーティから抜けた。

次の日からなぜか新人は、僕を待たずにコンテンツに入るようになった。深く考えず、一人で行けるようになったんだと思った。 正直、ほっとした。別に新人と二人で行動することで、どうこう思われることはないのだが、サブマスターの事を思うと心の負担だった。

プレゼント

年末は、この世界も一大イベントがある。FCでもイベント企画があって、こういうときは、サブマスターのフレンド組が力を発揮した。

僕は、参加しただけだ。役割や芸を要求しないのは、新参で内向的な僕に気を使ってくれていたのだと思う。イベントのゲームは、よくあるサイコロ大会で各自好き番号を最初に言って、マスターがダイスを振って、一番近い数字の人が優勝となる。自分は、4等で、ミニオンをもらった。ここでも、一番でもびりでもなく目立たない位置だと感じた。

ただ今年は、FCのみんなにプレゼントを用意した。彼女だけに特別にとはとても勇気がなかったので、みんなに送るんですよという体を取った。最新のヒーラー飯が、いい感じのお菓子だったので、それを選んだ。

みんなに渡して回った。流れで彼女の番になって、たぶん当たり障りなく喜んでくれるんだろうなと最初から感じていて、その通りになった。

それでもうれしかった。僕なりに頑張ったと思う。こうして年がくれた。

嫉妬

彼女からヘルプが来た。フレの討滅戦攻略の手伝いだった。いつものように快くOKを出して、パーティに加わった。いいところを見せたくてMTでやりますよと軽口をたたいた。

ムービーアイコンで初見のキャラが確認できた。ヴィエラのイケメンキャラだった。

戦闘が始まった、見知ったコンテンツなので問題なかったが初見には厳しいか特有のギミックがあった。そのギミックがイケメン君に襲い掛かりAOEを踏んだ。ヤバい、忙しいので、ヒーラーの対応遅れ気味になる。とっさにタンクの持つ軽減を投げてイケメン君が次の攻撃で倒れることを防いだ。この動き見てるよねと、ちらっと、彼女を見た。その後は問題なく敵を倒し、戦闘が終わった。

社交辞令的に「クリアおめでとう」とお祝いのメッセージを送った。

彼女は、クリアしたイケメン男性キャラとエモートの掛け合いを始めた。他のメンバも周りでクラッカーや踊りなど楽しげにふるまっていた。

僕はその輪に入ることができないどころか、いらいらしだした。彼女に褒めてもらいたいとか、お礼を言ってほしいのではない。そうではない。

最近、彼女が男性キャラフレンドと仲良く談笑しているのを見たり、自分がいけないコンテンツに一緒に行っているのを見ると、感情がうまくコントロールできなくなっていた。いわゆる嫉妬だと思う。黒い感情に埋め尽くされた。自分が小さくて情けなくなる。

一人そっと、コンテンツから出て、パーティから抜けた。こういうときは、僕はボッチでコスタ・デルソルの丘から海をながめて心を落ち着かせる。

この場所は、好きだ、特に夕日がいいと思う。この世界の1日は、早いので、ぼーっとしているとすぐ夕日が迫ってくる。

周りには、モンスターが数体いるだけで、人はいない。一人で座っていても誰にも見つかることはない。たまに、上空をマウントが飛んでいくが、僕のことなど、気にもかけてないだろう。

マスター

マスターは、積極的に話しかけるタイプの人ではないが、質問などには、親切に答えてくれる、頼れる存在だ。

もともと、マスターとサブマスターを中心に仲の良いメンバでFCを作ったらしい。初期メンバの何人かは引退したようだが、僕のように新しく入ったメンバも何人もいる。僕が最後に加入した一番の新参者だ。マスターのフレンドつながりの加入者はほとんどおらず、自分のようなサブマスターのフレンドからの加入が半数くらい。あとは、公募による参加だった。

マスターは、フレンド組にも、公募組にも分け隔てなく、公平に接しており、誰にも親切だった。そこは、サブマスターも同じだったが、フレンド同士は、やはりサブマスターとつるむことが多かった。

僕は、元来のボッチ気質だったので、フレンド組の輪には、なかなかなじめなかった。

FCハウスでたまたま、マスターと二人だけになった時、サブマスターをどう思うか聞かれた。どういう意図かわからず、自分の気持ちを見透かされているのかドキッとした。

「何時もよくしてもらっており、親切な方です。」と答えた。

ちょっと間が空き、マスターから、ルレへの参加提案があったので、一緒に行った。 タンクメイン同士、マスターとは、気が合うと感じていた。この人なら彼女が一緒にいても仕方ないかなと思った。マスターに対しては、不思議と嫉妬のような黒い感情は、わかなかった。

気持ち

彼女は、誰にでも気軽に声をかけることができ、誰とも仲が良かった。

憧れの気持ちが湧いた、異性に対する気持ちだったかもしれないがその時は、気がつかなかった。

ルーレットには、一緒に行くことが増えたが、それ以上の難しいコンテンツへの参加は、プレイスキルが圧倒的に不足しており参加できなかった。

自分の戦闘能力の低さを恨んだ。木人に向かったり、練習でダンジョンにもぐったり自分なりに工夫は重ねてはいた。飛躍的にうまくなるわけはなかったが、彼女に成長したと褒められるとうれしかった。 マスターとサブマスターとFCの何人かメンバで固定を組んで高難易度コンテンツに挑んでいた。僕は、その中に入ることは夢のまた夢のため、あきらめと同時に、焦燥を感じていた。何時になったら追いつけるのだろう、追いつけるのだろうか?と。

イベント参加

討滅戦へバーティ募集があった。自分も参加できるコンテンツなので、応募した。

仕切っていたのは、サブマスターの彼女だ。彼女は、会話の起点を作って、コミュニティを盛り上げていた。

マスターは、逆にどっしり構えた人で、あまり前に出るタイプではなかった。

参加予定の8人がそろいイベントが始まった。コンテンツに突入。たくさんのメンバが初見だからギミックがわかっておらず、ワイワイ攻略を楽しんだ。この時、うまく立ち回りたいとか、そういう気持ちはなくなっていた。純粋に協力プレイを楽しんでいた。

マスターがMTだった。自分はSTを担当した。彼女は、ヒーラーだった。自分よりレベルが高く、全然うまかった。偶然、あそこで出会った彼女は、サブジョブで無理に敵を集めた結果だった。自分が助けるようなスキルレベルでなかった。 何度か全滅して、ギミックがわかってきて、いよいよ、次こそはという雰囲気が漂っていた。何もかも忘れ、戦闘に集中した。倒し切った時には、達成感で、思わず声が出た。みんなで、撮影会を行って、イベントが終わった。

Free Companyにはいる

ある時、彼女の入っているFC(フリーカンパニー)への加入の誘いがあった。彼女は、FCのサブマスターだった。

マスターさんにあいさつした。マスターさんは、男性キャラでよい人そうだった。加入を決めた。

この世界にだいぶ慣れてきて、交流をしている人たちが羨ましかった。通りで会話している人がまぶしかった。自分も、そろそろどこかに入ろうかなと思っていたので、いい機会だった。メンバさんも、お手伝いで会った人がいて、いい人ばかりだ。 FCの加入は新鮮だった。彼女を中心に、他のメンバとの交流も生まれた。

交流

いつものようにこの世界に入った。友達の状況は確認できることを知った。彼女も入っている。といって、何をやっているのかもわからず、コンテンツに誘うことなど想像もできなかった。

淡々と日課の処理を始めた。この日常が楽しい。レベルも上がり、成長の喜びがある。

そんな中、突然、チャットが飛んできた。「今暇?」彼女からだ。まあ、暇なので、暇ですと回答。どこまでのレベルのダンジョンいける?

短い会話のあとに、パーティ勧誘の通知が来た。パーティに呼ばれるのは、初めてだ。

彼女の友達の攻略を手伝ってほしいとのことだった。自分には、見慣れたダンジョンで、問題はなかった。

が、知り合いと行くのは、初めてだ。自分が下手だとは思われたくないという変な気持ちが湧いてきた。人間って不思議、知らない人と行くときの方が緊張しないんだ。うまく立ち回ろうとすると、かえって空回りする。へとへとになって終わった。問題はなかったし、お礼も言われた。でも、すごく凹んだ。

劣等感が自分を支配する。なんで人の目を気にするんだろう。こういう、誘いが、何度か続いた。

再会

友達はできた。でもかかわり方がわからない。当然、こっちからなんの連絡もしない、できない。

今日もいつものルーティンを回す。ダンジョンを申請。もう申請に悩むことはない。なれた物だ。それだけ、この世界になじんだということである

いつものように、あいさつし、うまくなりたい(うまく見られたい)とスキルを回す。

終わった。報酬をもらって、ダンジョンから出るのだが、僕は、操作が遅いので、いつも最後になり、僕が出るときには、誰もいない。

でもこの日は違った、だれか残っている。しかも、ぴょんぴょん跳ねている。名前を見ると、あの時の彼女だ。固まっては、ダメだと、「お疲れ様」とあいさつした。

会話が始まった。あの時はありがとうと、またお礼を言われた。助け合うのがこのゲームの基本で特別なことをしたわけでないので、そこまでお礼はいらないと伝えた。

こんな偶然があるんだねと、初めて画面の前で笑った。ストーリーで笑うことはある。当然、楽しいから続けているんだ。 でも、人とのかかわりで笑ったのは初めてだ。なんか新しい気持ちが沸き上がったことを感じた。ダンジョンで長話もなんなので、ちょっと話して、ダンジョンを出た。ダンジョンを出ると、それぞれ、ダンジョンに入る前の場所に戻るので、その時は、そのままわかれた。