前回の食事以来、坂本さんのことが気になっていた。映画も2回行ったし、桜の季節も過ぎた。映画以外の趣味を聞いていない。どうアプローチしていいのかわからない。お話がしたいな。チャットで、坂本さんに「最近どうしていますか。」と送った。「ちょっと仕事が忙しくて連絡とらなくてごめんなさい」と返ってきた。声が聞きたくなって、意を決して音声通話をかけた。「こんばんは、今大丈夫ですか?」「こんばんは、大丈夫だよ。」
言葉が続かないどころか、声が出ない。
沈黙が続くので坂本さんから「どうしました」と言ってきた。
「いや、最近どうしてるかなと、今週末どこか行きませんか。」全くノープランのまま切り出してしまった。
「暖かくなったので海をみにいきませんか。」と言われた。
坂本さんに、ちょうどお昼に海が見える公園につく時間に集合時間が指定された。僕にとっては、初デートの感覚だった。まだ水曜日なのに、週末までずっとドキドキしていた。
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装備更新
低レベルの装備なので、武器を含めて11個の装備もすぐにHQ品が完成した。アヤちゃんにトレードでわたす。今回は素直に着替えてくれたが、「せっかくもらった指輪もう外すんですか。」と言ってきた。「このレベル帯は、すぐゴミになっちゃうので気にしなくていいんだよ。」
「あと、私、まだギルもないのでお返しもできません。」と言ってきた。「ゴミなんだからお礼要らないよ。笑顔見せてくれればそれでいいよ。お礼したかったら、アヤちゃんがレベル上がった時に初心者のサポートをすればそれでOK。」
「でも、指輪もったいないな。」
「だったら、ミラプリすればいいじゃん。水着もあるんだし。」とミラージュプリズムも99個あげようとした。「そんなに要りません。10個だけ頂きます。ありがとうございます。」といって、10個だけ受け取った。
僕はチャラ男キャラなので「それで水着着てきてね。」と念押しした。
次の日、FCハウスに行くと水着姿のアヤちゃんがいた。長谷川と話している。僕が近づくとアヤちゃんが気付いて、「バッドさん、どうです。」とポーズを決めた。「似合ってる。アヤちゃんは何でも似合うと思うけど。」
長谷川は黙ったままだ。アヤちゃんが「クエスト行ってきます。」というので、僕も「行ってらっしゃい」と応じた。アヤちゃんが消えると長谷川は、僕に対して「手を出すなと言っといただろ。絶対に傷つけるなよ。」とすごんできた。なんで怒ってるんだろう。
指輪
この日ゲームに入るとすぐに長谷川から連絡が入ってきた。今日は、用事があって入れないから、代わりにアヤちゃんのサポート頼む。と言ってきた。FCハウスでアヤちゃんが待っていた。二人でIDに行くのは初めてだ。アヤちゃんは、いつもの通りヒーラーだが、僕は、タンクでもよかったけど、どちらかが落ちたときサポートできないので、念のため蘇生付きのキャスターでCF申請した。タンクとDPS1名を加えてアヤちゃんが解放したばかりの未攻略のIDに挑戦する。タンクが結構まとめるタイプで危なかった。僕もヒールのサポートしつつ、攻撃した。2ボスまでは、何とか支えていたが、2ボスと3ボスの間の道中の雑魚を全部まとめて、対応できなくなった。とうとうタンクが倒れた。アヤちゃんはパニックになっているようだった。僕がタンクを蘇生して回復している間に、もう一人のDPSが倒れた。残りの雑魚は、僕とタンクで処理した。タンクが、アヤちゃんに向かって、「ちゃんとヒールしてください。」とチャットしてきた。僕は、カチンときて「まとめすぎなんだよ。責任転嫁するなよ。」とチャットで返してしまった。タンクも「これくらい支えられないのは下手だからだろ、迷惑なんだよ。」と返してきた。アヤちゃんは黙っていた。そこに、もう一人のDPSが走ってもどってきて「まあまあ、あと3ボスだけだから先行きましょう」となだめた。タンクは、「まあまあじゃねえよ」というとIDから退出してしまった。もう一人のDPSが「続ける雰囲気じゃないですね。」といって、そこで解散になってしまった。
アヤちゃんが「ごめんなさい」と言ってきた。
「アヤちゃんは悪くないよ。あいつがまとめすぎただけだよ」と素の自分で回答してしまった。直ぐにチャラ男キャラだったことを思い出して「水着着てくれてないんだね」と付け加えた。
「着るわけありません。」
アヤちゃんの装備を確認すると指輪もつけていない。
「指輪はつけてよ」というと「つけられません」と返ってきた。
「そうじゃなくて今つけている指輪は、レベルが低いんだよ。もうレベルアップの効果もないので交換したほうがいいよ。」
「えっ、そうなんですか。レベルアップに有利だからつけておいてとマスターに勧められていたので。」と、ちょっと驚いていた。
「かわいいアヤちゃんに意味ない物なんか送らないよ。」やっと調子が戻ってきた。
「装備更新時期だね。指輪つけてもう一回ID行こうよ。」と僕が提案する。
次のID攻略は、ダンクが無理なまとめをしなかったので、うまくいった。
クリアするとアヤちゃんのレベルが1個上がった。
「装備更新しよう。ちょっと待って。直ぐ作るから。」
と僕は、FCハウスにアヤちゃんを待たせ、近くのマーケットボードに素材を買いに行った。
プレゼント
水着は、初めてそうだったので露出の少ないパレオ付きの物にした。その他に、レベルが足りてなさそうな部分の装備といつもの花束も送った。花束は、女子へのプレゼントにいつも添える。グリダニアンブーケだ2000ギルで、グリダニアにある花屋タニで買える。
坂本さんからまた、映画どうですかときた。前回、食事断って悪かったなと思いだしたが、なんで僕なんかに連絡してくるのかわからなかった。理由が聞きたくなったので承諾の連絡を入れた。桜の季節なので、映画館から少し離れた場所のお店を予約した。映画館とお店の間に桜並木があり、きれいと有名だった。
その映画は、僕にとっては、あまり面白くなかった。坂本さんは満足そうだった。その後、桜並木に向かった。桜は、見ごろできれいにはきれいだったけど、人が多すぎた。雰囲気は全くない。お店につき、席に着く。食事ながら、僕は率直に聞いてみた。「僕の話はつまらないでしょ。申し訳なくてこの店予約しました。」
「そんなことないですよ。月島さんは落ち着いているし、私と趣味もあってると思います。」
にこやかに答えられると意識して、「そうですか。」としか出てこなかった。
坂本さんが話し出した。
「この間、チャラ男の話したじゃないですか。今度は、プレゼント送ってきたんです。花束と指輪が入っていました。どういう意味なんですかね。」
「完全に好意があるという意味でしょう。坂本さんはどう思っているんですか。」
「チャラ男なので意味ないと思うんですけど、水着も送りつけるんですよ。」
僕の問いに対して、坂本さんの相手の男性への考えを回答しないところが高等テクニックだと思った。そういえば、水着と花束に加えてアヤちゃんに装備で足りてない指輪も送ったことを思い出した。リアルでもそんなプレゼント攻撃するやつがいるんだと感心した。
「すごい積極的ですね。僕も頑張らないとだめですね。」と言ってしまった。
坂本さんは、ちょっとうれしそうに「そうですよ、頑張ってください。」と返してきた。
なんか、完全に坂本さんのペースに乗せられていると感じる。僕は、これから何すればよいのか、ゲームと違いさっぱり分からなった。
初ID
水着撮影会のSSを日記にあげた。我ながらよく撮れたと思う。FCハウスに行くとアヤちゃんが庭にいた。
アヤちゃんに「今日もアヤちゃんは、いつもの通りいい感じだね。」とりあえず会ったら褒める。「僕の日記のSS見てくれた? そうだ、水着持ってないよね。今度、プレゼントするね。」と言ってみた。
「要りません。」と冷たい。
「遠慮しなくていいよ。そんなにギルかからないから。」
「そういうことじゃないです。」
そこに、長谷川が来た。
「バッドもいたんだ。ちょうどよかった。これからアヤちゃんの初IDに行くんで付き合って。」
「了解でーす。」と安請け合いした。
長谷がタンク、アヤちゃんがヒーラーで、僕がDPSだった。3人でCFに申請した。直ぐに1名が集まって突入した。長谷川は、ゆっくり進んでいるので、問題はない。長谷川ってこんなに気を遣うやつだったかなと思った。IDは問題なくクリアできた。
「クリアおめでとう。そうだ、水着の件、用意出来たら送るね。あ、フレじゃないと送れないか。」とアヤちゃんにフレンド申請した。
アヤちゃんは、長谷川にはお礼をいって、僕のことは無視していた。ただ、フレンド申請は承認された。
映画
今日、スマホに坂本さんから連絡が入っていた。すっかり忘れていたが、SNSの交換だけしてたんだ。「この映画みましたか。もしよかったら、一緒に見に行きませんか」とは書いてある。“何の目的があるんだ。僕と遊んだって面白くないだろう。”と思いつつ。「すみません、その映画には興味ないです。」と返した。すると、音声通話が鳴った。坂本さんからだ。「だと思いました。実はこっちを観に行きたかったんです。今週末どうですか?」
僕は、直接のお願いに弱い。なぜか借りがあるように感じて、返さなければと思い、要望を受け入れてしまう。即OKした。
映画は、普通に面白かった。その後、カフェに入った。そこで、坂本さんから、相談があった。「最近、チャラ男にからまれて困っているんです。入れてもらったサークルの先輩なので無下にできないので適当に合わせていますが。どうすればいいんですかね。」
映画サークルかな?と思いつつ「坂本さんに好意があるんじゃないですか。」と返した。
「私は、チャラチャラした奴が大っ嫌いなんです。月島さんは、どういう人が好みですか。」
「僕ですか。」と天井を見上げて「そうですね。落ち着いた人ですかね。」と具体的なイメージがわかず、適当に答えた。
「そうですよね。私も、落ち着いている人が良いと思うんですよ。」と、同意見に納得している感じだった。
夕方になって、彼女が、「この後、食事どうですか」と提案があったが、今日は大事な予定が入っていた。ヴィエラ女子との水着撮影会の予定が。だから、なんとか僕は、その食事の誘いを断った。理由が説明できないところがつらい。
新人加入
長谷川のキャラネームは、Good River グッド リバー、名前からとった感じだ。僕は、全く名前が思いつかなかったので、長谷川の名前を逆にしようとBad Islandにしようと思った。バッド アイランドでは、ゴロが悪いので、バッド ランドにした。僕は、長谷川の作ったフリーカンパニー(FC)に所属している。人つきあいがうまい長谷川は、ゲーム開始早々、友達を2人つくっていた。さらに、FCを作るからと僕も誘われた。正直当時、FCには興味なかったが、直接の頼みだったので断れなかった。
その僕と長谷川のフリーカンパニーに新人が加入してきた。確認するとかわいい女性キャラだった。名前は、Aya Bluemoon、アヤちゃんか。長谷川が、珍しく、僕に、手を出すなよと言ってきた。そんなこといつも言わないのに。そういわれても、ここでの僕は、チャラ男なので、そういう訳にはいかなかった。とりあえず、手を出すというのがロールプレイの掟だった。
新人加入で紹介するからとマスターの長谷川からFCハウスに呼び出された。新人がいた。
「アヤ ブルームーンといいます。アヤと呼んでください。よろしくお願いします。まだ始めたばかりです。色々教えてください。」とチャットで自己紹介した。
僕も「バッドです。よろしく。アヤちゃんか。いい名前だね。キャラクリもかわいくていいよ。ジョブは何?」と返した。
アヤちゃんは、ちょっと引いた感じで「幻術士です。」
「だよね。やっぱり。似合ってるよ。一緒にダンジョン行こうか。」と返す。
「まだレベル1です。行けません。」
「気にしないで、いつでも、一緒にいくから。じゃ、レベル上げ行こうか。」
あくまでもからもうとする。見かねた、長谷川が、「バッド。」と僕に呼びかけた。「ルレ行くよ。」と。
仕方ないので、「じゃ、また。なんかあったら気軽に相談して」と会話を終わらせた。僕は、オンラインなら普通に会話ができる。
合コン
長谷川を見つけると、そこに、5人が座っていた。女性3人と男性2人が対面で座っている。合コン?聞いてないよ。異業種交流と聞いていた僕は、戸惑った。長谷川の隣の空いている席に座った。前の女性が少し怒っている風で長谷川に「同期の飲み会と聞いたんだけど。」
長谷川が、前の女性をさし、「いや、受付の沙耶ちゃんが、僕の同期の女性が一緒ならいいよというから。」続けて、僕を指して「こいつは、大学の同期、月島君です。」といきなり紹介された。
「どうも、月島です。」なぜか、僕の自己紹介から会が始まった。
長谷川の隣の男性と僕の目の前の女性は、長谷川の会社の同期だった。他の女性二人は、長谷川の会社の受付とその友達だという。
数合わせで呼ばれたのか。長谷川はいつもこうだ。大学の時からノートを貸したり、レポートを手伝ったり。今でもゲーム内でのつながりがあり、縁が切れない。
僕は、対面で話すのが苦手と感じているので、適当に飲みながら、黙って話を聞いていた。目の前の彼女は、坂本さんというらしい。趣味の話になったが、僕の趣味は、ここでは、言いたくなかったので適当に映画鑑賞とか言ってみた。坂本さんから、最近何見ました。とふられたので、適当に、あらすじを知っている最近の映画を言ってみた。それがツボに入ったのか私も観たと感想をしゃべりだした。僕は見ていないので適当にそうですねとか相づちを打つしかなかった。
長谷川は、スポーツもやっているのでその話をするのかと思ったら、僕とやっているゲームの話をしだした。メタとか仮想世界とかSFに興味があるのか坂本さんも興味を示していた。ゲーム内の対戦をE-スポーツのように語る長谷川をみて話は組立次第だなと感心した。僕にはできないけど。飲み会が終わり、2次会へという流れになったが、僕は、失礼した。坂本さんも帰るという。他の4人は次の店に消えていった。坂本さんは、「酔い覚ましにお茶でも飲みながら、映画の話しませんか。」と言ってきた。僕はもう対面での会話に限界を感じていたので、なんとか、それを断って、帰宅した。
呼び出し
金曜日には珍しく今日は、会社を定時で上がれた。夕飯のコンビニパンをかじりながら、オンラインゲームにログインする。僕は、ゲーム内でチャラ男キャラのロールプレイを楽しんでいる。“今日はどの娘と遊ぼうかな。”と考えていると。そこに、スマホが鳴った。SNSで長谷川からだった。飲み会の誘いだ。
30分くらいで行ける距離だったが、もうゲームにもログインして、正直だるかったので、チャットで断った。すると、今度は、通話の呼び出しだ。今からアパートを出る。僕は、直接のお願いに弱い。なぜか相手に借りがあるように感じて、返さなければとつい、要望を受け入れてしまう。昔からの癖なのだ。服を着替え、急いで、飲み会の場所に向かった。