昼休み

なぜか、カコちゃんには、元カレのこと相談したいと思わなかった。カコちゃんは、あっちの世界では、憧れで尊敬の対象だった。プレーヤーとして、女性として。そんな人に、別れた男?、女?の話なんかしたくなかった。ルカ君は、私の価値に気づいたか、単に寂しいか、新しい彼女に振られたかのいずれかだといったけど、私の価値に気が付いたのなら、戻ってあげてもいいかなとちょっと思った。けど、それを確かめる方法が無い。山田君にも相談してみるか。恋愛経験ないけど男の心はわかるだろう。山田君は、大体一人で食堂で昼食をとっている。そこを狙うことにした。

山田君の前に座る。山田君は、チラっとことっちを見て、ちょっと驚いて「どうしたの」と聞いてきた。
「いや、相談。」
「ゲームの質問ならカコが聞くけど。」
「違う。こっち側の話。ちょっといいかな。」
「こっち側?いいですよ。僕でわかることなら。」

スキル回し

スキル回しの件は、カコちゃんに相談しよう。こういうことなら相談しやすい。カコちゃんに連絡すると、時間と場所が指定された。フィールドにある木人の前にいる。カコちゃんがやってきた。早速モンクになってくれた。

「まあ、モンクはちょっと難しい方だから、言われたことは、あまり気にしない方がいいよ。レベル50台の基本的な回しを覚えてね」とアドバイスをもらう。
今日のカコちゃんは、モンクだ。
「私ももう、カンストなので、そのレベルの回ししか練習してない。」
すごいな、カコちゃんは、タンク、ヒラ、DPSなんでもできるんだ。カコちゃんから、各レベル帯のスキル回し例のあるURLを教えてもらった。
「あと、ホットバーの配置を工夫したほうがいいよ。コンボでつなぐスキルは、近くに配置して、単体攻撃と範囲攻撃は分けてまとめるといいよ。あと、軽減とか強化、回復などバフ系もカテゴリごとにまとめると判断迷わなくなるよ。」
カコちゃんがいて本当に良かった。こんなこと一人じゃ絶対に気が付かない。
「カコちゃんありがとう。後は自分で工夫してみる。時間取らせて、ごめんね。」
「ベンタ君は、前向きに楽しんでいるみたいでうれしいよ。なんかあったらいつでも相談して。じゃあ、頑張ってね。」
と言って、カコちゃんはテレポしていった。僕は、ホットバーの配置を見直して、たどたどしく、スキル回しの練習を始めた。

レベルレ

相談後、ルカ君がレベルレ行こうというので、一緒に入った。ID攻略は特に問題なく終わったと思ったが、ヒーラーさんから僕にチャットが来た。
「モンクさんちょっと火力少ないですね。ヘイト順位が常時最下位です。スキル回しができていないんじゃないですか。回しをちょっと確認してみたほうがいいですよ。」と言われた。

僕は、自分の火力を今まで気にしたことなかった。ホットバーで押すボタンが強調されるので、順番に押す感じだった。
一緒にいたルカ君にまず相談した。
「ルカ君、スキル回し練習してる?」
「まあなんとなくだけど、一応やってるよ。木人相手にポチポチやってる感じ。攻略サイトとかに回し例とか載ってるから。レベル帯で使えるスキルが変わるので、いまいちやる気にならないんだよね。」
ルカ君は、練習しているらしい。
「ルカ君ちょっと教えてよ。スキル回し。」
「いや、僕は、モンク知らないから、教えられないよ。」
どうしよう。

元カレ

もう、別れてから3か月以上もたったのに、未だに、引きずっている。未練なのか、ふられたことのプライドが許せないのか、よくわからなくなっていた。SNSの連絡先は、まだ残してある。寂しいことには変わりない。ゲームが楽しいのが救いだった。

そんな時、突然、SNSに元カレから「今、ひま?どうしている。」と入ってきた。
私は、その連絡に、飛びつきたかったけど、男性の僕がそれを押しとどめて、ゲームに入った。まずルカ君に相談しよう。丁度よくルカ君はインしていて暇なようだった。
「あの、ちょっと相談なんだけどどいい」と僕が切りだす。
「なに、何の相談」と怪訝なルカ君。
「3か月前に別れた彼女から連絡が来たんだけどどういう意味かな。」男女を逆にして説明。
「よく状況がわかんないんだけど。どうしてわかれたの。ベンタ君が彼女をふったの、それとも彼女からふられたの?」
「僕がふられたんだよ。いきなり別れたいって。」
「女性が3か月も経って、よりを戻したいか・・・・。僕には、わからないなその気持ち。単に寂しくなって連絡してきただけじゃないの。」
「そうだよね、自分勝手だよね。」
「ベンタ君は、まだ未練あるの。あれば、連絡とればいいじゃないですか。」
それが男の気持ちか。いや、待てよ。立場逆じゃないか。この場合参考にならないよね。
「例えばの話なんだけど、ルカ君が、ふった相手に3か月後に連絡することある。」
「えっ、僕ですか。一人になって冷静に考えたら元カノの価値がわかったとか、単に寂しいとか、新しい彼女に振られたとかならするかも。」
「ふーん。」
「ふーんって、ベンタ君も同じじゃないの。」

お返し

ザッハトルテができた。カコちゃんに渡そう。呼び出し方がわからない。相談でいつも呼び出してるけど、今回は、どう切り出せばいいんだろう。しかもチョコ。僕は男子だけど、おかしくないよね。いろいろ考えてしまい、連絡できない。いつものように頼みごとがあることにした。カコちゃんがやってきた。
「どうしたの?ベンタ君」とカコちゃん。
「カコちゃんに受け取ってもらいたいものあって。」とトレードする。
「ザッハトルテ。くれるの?ありがとう。」とカコちゃん。
「たぶんカコちゃんには意味ないものだと思うけど。いつもお世話になっているから、なんか形で感謝を伝えたかったんだよ。」
「ううん。ありがたくいただくよ。ありがとう。」
プレゼントって男女関係なく、思いを伝えるものだよね。物を渡すのは、形だけだよ。そういうことを忘れてたのかな“私”は。

調理師

僕も、カコちゃんに何かプレゼントしたいと思って、クラフターを始めた。カコちゃんの装備レベルは僕が作れるレベルのはるか上を行ってるので、装備は諦めて、調理師を始めた。実用面でなく、感謝の気持ちを届けたかった。だからチョコを作って渡そうと思った。

カコちゃんには、黙ってクラフターを始めた。ルカ君が既にクラフターを始めていたので、レベル上げのやり方を聞いてみた。
「ルカ君、調理師始めたんだけど、クラフターってどうやってレベル上げするの?」
「ベンタ君もとうとう、ギャザクラに手を出したか。一番おいしいのはGC納品かな。でも各ジョブ1日1回しか納品できない。結構レベル上がるよ。後は、ギルドリーブかな。リーブ券使わないから100枚貯まってるでしょ。」
「ルカ君ありがとう。助かったよ。持つべきものは友だね。」
「ギルドリーブは、レベルにあった納品物を作って納品すればいいよ。お金があれば、マケボで買って納品もあり。冒険者ギルドと納品場所を往復するのでなるべく近い納品場所を選ぶのがコツかな。あと、大口納品があればそれを選ぶ。リーブ券1枚で3回同じものが納品できるので効率がいいよ。」
ルカ君は、おだてると、さらに情報を教えてくれた。褒めると気前よくなるのが男心なのかな。
ちょっと頑張って、調理師をレベル50にした。1週間くらいかかった。ちょっと高級そうなチョコを探す。ザッハトルテが良さそう。製作には、秘伝書?が必要。なんだそれ?
カコちゃんには聞けない。ここはネットの力を借りよう。秘伝書で検索したらロドスト日記などがひっかかった。無事秘伝書も入手できた。先輩ヒカセンに感謝だ。
後は作るだけ。

再挑戦

まず、ルカ君に謝ってから、カコちゃんから聞いたアドバイスを説明した。当然カコちゃんに相談していることは伏せていた。もう一回CWLSに募集出して行こうとルカ君に提案する。
「まだ自信ないな。まず二人で行かない。」と逆に提案された。“かっこ悪いところを見せたくない“きっとこれが男の気持ちなんだと思って、まず二人で野良攻略しに行った。
アドバイスが効いたのか2回目なので落ち着いていたのかわからないけど、ルカ君は、倒れることなくクリアした。

自信が付いたのかルカ君が「CWLSで募集出して、もう一回行こうか」と言ってきた。
“かっこいいところを見せたい“きっとこれが男の気持ちなんだと思って、ルカ君に変わって僕がCWLSに募集を出した。僕が募集出せば、きっとカコちゃんは気が付いてくれると思った。案の定、カコちゃんは、前回と同じヒーラーで参加してくれた。問題なく攻略を終えた。無事、ルカ君との仲は元通りになった。

助言

ルカ君と仲直りしなきゃと悩んでいた。そうだカコちゃんに相談しよう。
ルカ君のカコちゃんへのあこがれを隠したまま、カコちゃんに相談した。

「一人だけ、床ペロするとちょっと凹むよね。わかるよその気持ち。でも大した問題じゃないんだけどね。」とカコちゃん。
「どうすればいいかな。」
「もう一度、同じ討滅戦、一緒に行こうよ。アドバイス伝えて、ベンタ君から。ポイントは、ボスからあまり離れないこと。離れるほど、避けるための移動距離が長くなるから。ベンタ君のちょっと後ろでいいと思うよ。あと、すぐに90度ずれて同じ攻撃が来るので、前の攻撃の発動を見たら、すぐ元居た場所に走る。それだけだよ。」
「ありがとう。準備できたらCWLSに募集出すね。」
カコちゃんにお礼を言って、ルカ君を探しに行った。

討滅戦募集

ストーリーの区切りの討滅戦に行くことになった。ルカ君は、二人で行こうというけど、僕は、カコちゃんのことが気になって、CWLSに募集出そうと提案した。ルカ君も否定する理由が見つからず、CWLS募集に同意した。
CWLSに「僕たち初見のこの討滅戦行く人いますか?DSP2名以外6人募集です。タンクとDSPがすぐに埋まった。カコちゃんは入っていなかった。ヒーラーが一人入り、あと最後の一人というときにカコちゃんがヒーラーで入ってきた。
初見は、僕とルカ君の二人だけだった。カコちゃんから「一緒に頑張りましょう。ムービーは、遠慮なくごゆっくり。」と言葉をもらった。言葉だけ聞くと確かに落ち着いた大人の女性だった。

僕は近接なので敵の後ろに貼りつく。ルカ君は、レンジなので離れていた。大きな扇範囲のAOEが出た。扇範囲は、近接は、避ける距離が短いので避けやすい。反対にレンジは、予兆範囲外までの距離が長い。ルカ君が被弾した。90度ずれて連続で扇範囲の攻撃が来たのでルカ君は、連続で被弾して倒れてしまった。ルカ君は、カコちゃんによって、すぐに蘇生された。CWLSのメンバは、初見ではないので他に倒れる人はいなかった。
戦闘終了後、CWLSのメンバからお祝いのチャットやエモートをもらっていると、ルカ君は、すぐにコンテンツから退出してしまった。ルカ君が気になって、僕は、お礼を言って、後を追った。
「かっこ悪いよね。床ペロしたの僕だけだよ。」とルカ君は落ちこんでいた。
「初見なら、よくあることだよ。」と僕は慰めた。
「カコさんにダメな僕を見られたよ。だから、CWLSで募集出したくないんだよ。」
「ごめん。カコちゃんに最近募集出さないから、たまには一緒に行こうと言われてたんで、つい」と僕は言い訳した。
「ベンタ君は、カコさんと仲がいいんだね。」と言って、ルカ君は、どこかにテレポしていってしまった。
ルカ君にカコちゃんの性別を教えたほうがいいんだろうか。でも僕も黙ってるし。悩ましい。

装備

男子キャラなので装備の見た目にはあまり気にしないことにしてる。男子だから。でも、やっぱり、これはないよねという、見た目の状態になる。このレベル帯は、クエスト報酬、店売り、IDドロップ品のミックス装備になっちゃうからどうしても、見た目問題がでて来る。ミラプリにもおしゃれ装備にもギルがかかる。そんなギルはまだ持っていない。テレポ代、交通費も結構かかるんだよ、このレベル帯は。IDもだんだん難しくなってきたと感じる。僕は、この世界に魅了されて、当初の男の心を知るという目的はきちんと覚えつつ、ストーリーを楽しんでいる。つい、装備更新を忘れて、ストーリーを進めてしまい、進行上で攻略が必要なIDに挑戦してしまっていた。DPSだからあまり問題にならないけど、タンクやヒーラーだったら事故につながってるかもと思った。
そんな時、カコちゃんが僕に装備を一式くれた。
「そろそろ。鬼門のIDに当たるよね。装備更新しておいた方がいいから、作っておいたよ。」
とカコちゃんが手作りしたHQ品の装備をプレゼントしてくれた。
「こんなにたくさんありがとう。本当に感謝します。」
製作装備で統一されていて、かっこよかった。しかも、オリジナルの染色がされていた。
青色だった。山田君に聞かれた僕の好きな色。カコちゃんの女性の心使いなのかな?