僕は、ドマへ向かった。青年の家は、医者として有名であったためすぐに見つかった。家には、青年の父親がいた。「私の手紙は、間に合わなかったのですね。」とぽつりと言った。青年に届けるはずの手紙を父親へ渡した。
昨年、青年の母親が病気になった。息子の邪魔をしたくなかった母親は、青年に病気のことを知らせることを止めていた。しかし、いよいよ、状態が悪くなったので母親に黙って父親が、青年宛てに書留を送ったのだった。青年は、母親のお墓に行っていると言いうので、その場所まで父親に案内してもらった。青年は、新しいお墓を前に手を合わせていた。僕は、それが終わるのを静かに待った。初めて会ったにもかかわらず青年とは何回も会ったことがあるような不思議な感覚を覚えた。青年は、僕からこれまで預かったすべての手紙を受け取ると一つ一つ中身を確かめた。父親は、青年に向かって「母の最期に、間に合うことができず。すまなかった。」と言った。しかし、青年は、大きく首を横に振り、「父さん、ちゃんと間に合ったよ。」とお礼の手紙を墓前に供えた。「母さんが僕に託したものだよ。形になって母さんに届けることができてよかった。ゆっくり読んでね。」と。

僕は、この後すぐに依頼元のレター・モーグリに任務完了を報告しに戻った。レター・モーグリから「時間かかりすぎ、どこほっつき歩いていたの!」と怒られた。僕の苦労も知らずに、理不尽だ。