長身美人

次の日、眼鏡女子に待ち合わせに指定された場所に向かう。時間になると僕の前に長身美人エレ女が現れた。
「マスターさん私です。」と声をかけられる。
ドキッとするほどの美女だ。
「こ、こんにちは、眼鏡女子さんですか。」
「そうです。このキャラで、ミコッテ女子と連絡を取ります。今日、作戦開始です。」
FC売却の日記は定期的に掲載されていた。そこに購入希望とコメントを入れた。早速、ミコッテ女子からコンタクトがあり、週末の土曜日の午後にFCハウス前で商談することとなった。


なぜか商談の情報が、ミコッテ女子からウサ男に連絡されていた。
「悔しいでしょ。商談の様子を見に来なさいよ。FCハウスの前で行うので。」
疑うのは当然だ、着ぐるみが売り手本人なので、僕たちは、ウサ男を含めて会議を行わなくなっていたからだ。作戦は、眼鏡女子と僕で計画していた。というよりすべて眼鏡女子が仕切っていた。
眼鏡女子は、この誘いは、買い手が、私たちのおとりじゃないか疑って、商談の場に僕たち全員いるか確認するためだと推測した。眼鏡女子はこの誘いに乗りましょうと言った。
土曜日の午後にFCハウス前に集合となったが、眼鏡女子どの様に対応するのかわからなかった。

反撃作戦

次の日、また僕たちは、ウルダハの冒険者ギルドに集まった。着ぐるみも来ていた。事前に眼鏡女子から着ぐるみが来たら、1時間くらい適当に雑談して、解散するように言われていた。ウサ男は、眼鏡女子から何も言われていないようで、ああだこうだうるさい。着ぐるみは、昨日のように運営が絡む話になると、それは無理でしょうとあきらめさせる作戦のようだった。僕と眼鏡女子は、ウサ男を適当にあしらって今日は解散とした。


解散した後、また数分後に、眼鏡女子からTellが入る。また、淡い期待を感じた。
「いろいろ考えましたが捨て身作戦しかないですね。」
眼鏡女子が切り出した。
「私がおとりのサブキャラを作ります。サブキャラにFCハウスを購入させます。」
「作戦は、こうです。まず、なるべく値切ります。それから、最初に半額だけチェストに入れます。残りの半分は、マスター権限が移行した後に支払いとします。」
「それじゃ買戻しじゃないですか。1000万なんて大金持っていませんよ。」
「当然、マスター権限が私に移った時点で、着ぐるみは除名しますので、ミコッテ女子に渡るのは半額です。」
ここで問題の資金について眼鏡女子が僕に聞いてきた。
「問題は、1000万近いギルを用意する必要があります。持っていますか?」
「当然持っていません。」
「ですよね。今回は私が用立てします。必ず返してもらいますから。」
眼鏡女子が女神に昇格された瞬間だ。
「マスターさんだけに、明日、サブキャラの姿を見せます。ウサ男は、本物なので絶対に言わないでください。」
本物とは、本当のバカのことらしい。僕もそう思う。

売買リスク

Tellの向こう側で呆れられていることが手に取るようにわかった。
「そこで、売り手は、監視役をFCに残しておきたいと思うはずです。そうすると今度は、買い手側にリスクが移ります。マスター権限が移行する35日間、いつギルが引き出されて除名されるかわからないためです。」
「あー、そうですね。」と僕は納得した。彼女のおおきなため息が聞こえた気がした。
「一等地といえSサイズですし、需要はそんなに高くないと思います。ゆっくり対策考えましょう。それより、FCに残した監視役です。わかりすよね。」
「も、もちろんです。だれですか?」と僕はわからなかった。
「マスターさん、本当に抜けてますね。唯一除名されていない、着ぐるみです。」
「あっ、そうか、そうですね。」
「だからあの場で話さず、こうして、二人だけで、離れて話してるんじゃないですか。私の推測では、ミコッテ女子と着ぐるみは同一アカウントです。二人が同時にログインしているところを今まで見たことがありません。」
「そー言われてみるとそうですね。」
僕の納得した様子に、眼鏡女子は、呆れたように、言った。
「今日は遅いので、明日また考えましょう。マスターさんも対応策考えてきてくださいね。あまり期待はしていませんけど。」

作戦

解散から数分後、眼鏡女子からTELLが入る。えっと思った。淡い期待を持ったのだが、
「まだ、マスターさんと呼べばいいですかね」
呼び方の確認かよと思って、
「呼び方はどうでもよいです。」
投げやりに返すと。眼鏡女子は、先ほどの取引ついて話し出した。
「この取引には、売り手、買い手とも、どちらの側にもリスクがあります。」
僕は、わかった風に
「そうですね」
と答えた。
「ギルの受け渡し時点でどちらかにリスクが発生します。買い手にマスター権限が移る前に売り手にギルが渡ると買い手がFC譲渡前に除名される可能性があります。逆に買い手にマスター権限が移った後だと売り手がギルを引き出す前に除名される可能性があります」
僕は、再び、わかった風に
「そうですね」
と答えた。
「あと、この取引は、売り手が1名の場合は、売り手側のリスクとなります。お分かりですか、マスターさん。」
僕は、再び、わかった風に
「そうですね」
と答えた。
「本当にわかっているんですか?」
「すみません。わかりません。」
Tellの向こう側で呆れられていることが手に取るようにわかった。
「売り手側のマスターは、買い手が新参のためマスター権を譲るために35日間ログインができません。マスター権限が買い手に移った瞬間、売り手は、メンバに格下げになるので、ギルを引き出す前に除名される可能性があります。」 「あー、そうですね。」と僕は納得した。

転売

テロリストが原発施設にサイバー攻撃をかける様子はない。まだキーはテロリストに渡っていないのか。しかし、既にチェストの中身は、テロリストに伝えられていた。 
ハートチョコが238個、ホワイトチョコが880個だった。チョコの数がキーだったのだ。 ミコッテ女子は、テロリストから謝礼を受け取り、あとは好きにしてよいと言われていた。 僕たちは、ゲームの進行もそっちのけでミコッテ女子の監視を続けた。数日後にロドストにFC売りますの日記が出た。僕たちのFCハウスの土地が1000万ギルで売りに出された。 
取引のやり方は、とても面倒だ。 購入希望者がまずFCに加入する。購入希望者がカンパニーチェストに1000万ギルを入れる。購入希望者の権限を2番目に設定する。マスターは、その後35日間ログインしない。 36日目にマスター権限が購入希望者に移る。晴れて取引成立。 
僕は面倒な取引だなと思ったが、誰もこの場で取引の詳細を優しく説明してくれなかった。多分、ウサ男も着ぐるみも理解できていないと思う。出来ているとしたら眼鏡女子だけだ。 ちらりと眼鏡女子をみた。眼鏡女子は、僕の視線をそのままそらさした。完全に嫌われていると思った。 
この日は、いい対策のアイデアが出ないまま解散となった。 

提案

僕は、さらに考えて、じゃ、ロドスト日記なんかに本件を載せてみたらどうかなと提案してみた。眼鏡女子の評価が上がるはずと今度は自信があった。
そしたら、着ぐるみがまた、
「さらし行為になります。除名も定式な手続きを踏んでいるので当事者間で解決しないと規約違反で、こちらが運営から罰則を受けます。」
着ぐるみの言うことも一理ある。
と眼鏡女子を見ると、僕に呆れたエモートを飛ばしてきた。完全な敗北だ。ウサ男からも「マスターなんだからしっかりしろよ。」と言われる。お前だろマスターは!!

会議

眼鏡女子の中の人は、警視庁の本部と連絡を取った。既に暗号キーは、テロリストの手に渡っている可能性ありと。眼鏡女子は、サイバー犯罪課の捜査員だった。このことを僕は、今後も知ることはない。ミコッテ女子は、テロリストに雇われた人間らしい。
眼鏡女子は、こんな時、冷静に、眼鏡を正して、つぶやいた。
「まずは、ミコッテ女子の目的を把握しましょう。」
惚れた。僕は、眼鏡を正すしぐさに完全にやられた。
僕は、まずは運営に相談してみたらと自信なげに言ってみた。
そうしたら、戦力外の着ぐるみがしゃしゃり出てきた。
「こういうことは運営はタッチしないでしょう。正式にマスター権限が委譲されている以上、規約違反でもないですし。」
着ぐるみの言うことも一理ある。

乗っ取られ

ミコッテ女子にFCが乗っ取られていた。というより、全員除名されていた。正確にいうと着ぐるみだけは、除名されていなかった。ミコッテ女子にとっても着ぐるみは、戦力外ということだろう。
僕たちは、ハウスを失ったため、昔のようにウルダハの冒険者ギルドに集合した。そこには、着ぐるみもいた。まずは、マスターであったはずのウサ男を問い詰めた。
「ミコッテ女子からヴァレンティオンのチョコをあげたいと言われて呼び出されたんだよ。俺の嫌いなホワイトチョコだったんだけど。それはどうでもいいか。ミコッテ女子に僕の方がマスターにふさわしいと言われたので、お前からマスター権限をもらったんだよ。そしたら今度は、一度マスターやってみたいというんだよ。直ぐに返すから一度マスターにしてとお願いされたんだ。」
僕は声を失った。
「ミコッテ女子は、マスターになったとたん。僕らを除名した。本当に女は信用できねえ。」
ウサ男とは、もうリアフレも絶交しようと思った。本当に。

乗っ取り

次の日、ウサ男がいきなりマスターになりたいと言ってきた。理由を聞くと、これまでは、ハウスもないFCだったけど、ハウスも持ったので、ちゃんとした人がマスターやったほうがいいと思うといってきた。
たしかに僕もマスターらしいことはやってこなかったけど、ウサ男も大して変わらないだろうと思った。リアフレなので関係を悪くしたくなかった僕は、真剣な相談に負けて、マスター権限を委譲してしまった。
眼鏡女子に会計責任者を任命する前にウサ男をマスターにしてしまった。次の日、大変になるとも知らずに。

チョコレート

ちょうど月は2月、ヴァレンティオンデーのイベントのさなかである。喧噪の中、なんとSサイズの一等地に当選した。土地の支払いも済、晴れて僕らの土地を手に入れた。すぐに、眼鏡女子を会計責任者に任命しようと考えていたがいろいろあり後回しにしていた。
その日の夜、ミコッテ女子から僕に連絡が入った。個人的な相談を含めてだという。
「マスターさんは、誰かとお付き合いしていますか?」
「いいえ、していませんよ。なんでですか。」
「わたしー。マスターさんのこと、ちょっと意識してるんです。これ私の気持ちです。」とハートチョコを渡された。
「ありがとう。」と言ってその場で食べた。
「それで、私たち二人の将来的なことも考えて、FCをもっと大きくしたい思うんです。私に、募集担当させてくれませんか? 招待と除名の権限を付与して欲しいんです。」
「ごめんね。そういうことは、みんなと相談して決めるから。」
何とか誘惑を振り切って、僕は、その場を逃げ切った。誘惑されている間、ずっと僕は、眼鏡女子のことだけを考えていた。